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 食品残さ等ゼロエミッション技術開発
 繊維生活部  ○笠森正人  木水 貢  森 大介  藤島夕喜代
 化学食品部  道畠俊英 勝山陽子
 農業総合研究センター  林 美央

1.目 的
 地域におけるゴミのゼロエミッション化を目指し,廃棄物をリサイクルする環境対応型社会を構築する技術開発が求められている。そこで,平成13年に施行された食品リサイクル法に対応した技術開発として,食品残さ等のゼロエミッションについて高温水等を利用した有用成分の抽出や減量化方法を,食品残さとしてオカラを主に取り上げ検討した。さらに固形燃料化についてもポリエステル繊維屑を含めて検討したので報告する。

2.内 容
2.1 高温高圧水による減量化と抽出液
 オカラは豆腐の製造工程において生じ,食用や飼料にも一部が利用されているが,多くは産業廃棄物として処分されている。しかし,大豆の栄養素がまだ残っており,その有効利用が望まれている。そこで,高温水によりオカラから有用成分を取り出すとともに,減量化を試みた。
 試験は乾燥したオカラと水を入れた容器を所定の温度に設定した恒温槽に所定時間入れ,水に溶け出したアミノ酸の分析とオカラの重量変化について測定を行った。先ず,図1に高温水によるオカラの減量変化を示す。オカラは処理温度180℃,200℃では1時間で減量は60%とほぼ一定に,150℃では3時間ほどで同様の減量に達している。この減量の傾向は米糠でも同様であったことより,このような有機物の減量には限界があると思われるが,食品リサイクル法が求める20%以上の減量化を上回っている。一方,200℃,4時間での高温水処理により検出された主なアミノ酸を図2に示す。図には常温の水で処理した結果と一緒に,米糠の場合も併せて示す。左図のオカラと右図の米糠を比べると,オカラは高温水処理によりアミノ酸の種類が多く検出され,量も多くなっている。米糠は常温の水の方が多くのアミノ酸が検出されている。これは,オカラが一度加熱されているために水による抽出が少なくなったためと考えられる。しかし,200℃,1時間における高温水処理ではオカラからのアミノ酸の抽出量は少ないが,他のアミノ酸が検出され,米糠においてはシスチンの検出量が多かった。このことより加熱時間が長くなるとアミノ酸の種類により分解が進行することが考えられ,抽出するアミノ酸の種類または量により最適な条件を検討する必要がある。さらに,酒粕ではオカラや米糠よりも多くのアミノ酸を抽出することができた。
 ところで,ポリエステル繊維屑についても同様な検討を行った結果を図3に示す。200℃の処理によりポリエステル繊維は徐々に劣化し,4時間経過後には触ると粉々になるほど脆くなるとともに,フタル酸の生成量も増大している。ポリエステル繊維屑の減容化,粉末化が200℃という樹脂にとっては低温でも可能であることがわかった。

(図1 オカラの温度と時間による減量変化)
(図2 高温高圧水および水により抽出された主なアミノ酸)(左図:オカラ,右図:米糠)
(図3 200℃の高温高圧水処理によるポリエステル繊維の変化)
(上段)とフタル酸(下段)の生成

2.2 抽出液の食品への利用
  オカラからアミノ酸が抽出されることがわかったので,このアミノ酸が含まれた抽出液を食品に利用するために,豆乳飲料と豆腐の試作を行った。豆腐の試作品を図4に示す。ここでは生オカラを使用し,加熱による焦げがなるべく少なく,抽出液も多く採取できる130℃で行った。なお,減量化は含水状態で20%以上になるようにした。試作した豆乳飲料または豆腐は,豆乳に対して抽出液を加えた物と,それと同量の蒸留水を加えた参照品を食味試験により比較を行ったが,ほぼ同等の結果が得られ,食品としての利用が可能であるとの示唆を得ることができた。酒粕からの抽出液についても飲料等の試作を試みたが,豆乳飲料では酒粕の味や匂いが少し強く出てしまう結果となった。

(図4 抽出液を加えて試作した豆腐)

2.3 固形燃料化
 今回は食品への応用を考えるために130℃という低めの試験を主に行ったが,200℃でもまだ処理残さが残る結果となったので,生オカラとポリエステル繊維屑による固形燃料化を各種検討した。それぞれの混合比が2:3の場合,水分率約5%,発熱量約23000J/gの固形燃料を試作することができた。この方法は高温水処理した残さにも適応可能と考えられる。

3.結 果
食品残さ等のゼロエミッション技術開発として高温水による減量化と抽出液の利用,固形燃料化について検討し,以下のことがわかった。
(1) オカラ等の食品残さの高温水処理により20%以上の減量化が達成できる。
(2) (1)の減量化により各種のアミノ酸が抽出され,その抽出液は食品への応用が可能である。
(3) 200℃の高温水処理によりポリエステル繊維屑は劣化と分解により,粉末化できる。
(4) オカラ等の食品残さとポリエステル繊維屑から固形燃料が作製できる。



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