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 インクジェットプリンターを用いたストールの開発
 山木絹織工場 代表  山木 彰英*

■技術開発の背景
 弊社は和装絹織物の製織を主とし,ネクタイ生地,衣料用織物を製織する工場です。今日まで生機状態,もしくは精練仕上げ状態での素材提供でしたが石川県工業試験場の染色CAD/CAMシステム研究会に参加しデジタルプリント染色を体験しながら,製織工場で染色加工する方向性を考えインクジェットプリンターを導入し,自家製織生地にこだわらずあらゆるシルク生地のプリントに挑戦し商品開発を行いました。
  現在までに,自家工場で製織した生地に独自のデザインをプリントし,デザイナーにプレゼンする試みをしました。ミチヨイナバ(横浜)の東京コレクションに提案し‘03‘04S/Sと2年連続して採用されました。インクジェットプリンターの少ロットのプリント対応が効果を出した結果だと思います。このようなことから,プリント生地提供ではなく自販体制を強化する為に,オリジナル商品の開発に取り組みました。

■技術開発の内容
 プリント製品で自販出来る商品の1つとしてプリントストールを試作しました。
 インクジェット染色のもう1つの特徴として,グラデーションが可能であるところにポイントを置き,グラデーションを全面にしたストールを企画しました。従来のシルクサテンの生地にグラデーションをプリントした場合,解像度にも関係してくると思われるが,指定した2色間の中間色にトーンジャンプ(処理できない色・もや)が発生することがあり,目の詰まった生地は特にはっきりと出てくる可能性があります。目の粗い紗等の生地であれば,グラデーションはなだらかに表現できます。今回,株式会社マイテックスのゴース織物の提供を受け試作に入りました。
 生地素材は サクサンゴース織物で,経糸とよこ糸ともに野蚕糸の一種であるサクサン糸を使用しガーゼと同じ語源であるゴース組織で,薄い織物のわりには,サクサン糸を使用しているのでハリのあるシャリ感があり,サクサン糸の諸撚糸を使用しているため独特の光沢があり清々しい風合いです。  
 作業手順
・プリント柄のデータは,フォトショップソフトを使用し,RGBモードで製作。
・1デザインにおいて,3色の色を選択し2色間同士でグラデーションをかける。
・3色を強調させるために中間色の明るさ・コントラストを調整し,3タイプのデータを作成する。
・生地幅は,縫製部分を加味して33cm幅を3枚取る効率よい幅を考え,長さ138cmに
 拡大する。
・インクジェットプリンターは,ミマキのTx−1600sで酸性染料を使用。
・生地が紗の為プリントの際,生地送りを安定させるために,前処理を固めにし,アンダー
  ペーパーを事前に通しその上に生地を置く。
・プリント染色後,後処理(スチーマー・ソーピング・水洗・乾燥・仕上げ)後縫製する。

■今後の展開
  インクジェットプリンター染色の特徴をいかしたものづくりを提案し,最終製品の企画,自販体制の強化をはかり絹業の活性化を考えていきたい。


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