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 農工連携による県産農産物を活用した機能性食品開発
 
−加賀野菜の機能性について−
 食品加工技術研究室 ○林 美央 道畠俊英 勝山陽子
 農業総合研究センター 太田礼子 三輪章志 吉川基世
 農業短期大学 矢野俊博 榎本俊樹

1.目 的
 近年,食に対する消費者ニーズは,栄養素の摂取やおいしさを感じさせる感覚機能の充足だけでなく,生活習慣病などの種々の疾病に対する予防効果(生体調節機能)を期待するようになっている。これは食の第3次機能と呼ばれており、さまざまな疾病の予防効果が期待できる成分が含まれた食品は「特定保健用食品」や「栄養補助食品」として多く市販されている。このような食品の機能性への関心が高まっていることから,本県においても県産農水産物、加工品の各種機能性成分を利用した食品の開発が望まれている。
 そこで,石川県では平成14年度から3カ年の計画で,工業試験場と農業総合研究センターが連携し,機能性の検索と機能性を利用した食品加工に対応できる体制づくりへの取り組みを開始した。具体的には県産農水産物,特産物の機能性評価やこの機能を利用した新規製品の開発を進める。本発表では,県産農水産物の中でも,加賀野菜(図1)に注目し,その成分分析と機能性評価(抗酸化能,血圧上昇抑制効果)を行ったので報告する。
(図1 加賀野菜)
*平成15年に金沢春菊が追加され現在は15品目

2.実験方法
2.1 試料の調整
 加賀野菜14品目(現在は金沢春菊が加わり15品目)について,一般成分、総遊離アミノ酸含量,抗酸化能,血圧上昇抑制効果を測定した。加賀野菜は一部の一般成分分析を除き,収穫物を凍結乾燥後粉末化したものを試料とし,測定項目により,過塩素酸溶液,ジメチルスルホキシド(DMSO),リン酸緩衝液で抽出し,それぞれの測定に用いた。
2.2 一般成分測定 
 五訂日本食品標準成分表の分析方法に従い,水分は常圧加熱乾燥法,タンパク質はケルダール法,脂質はソックスレー抽出法,灰分は500〜600℃で加熱し灰化,無機成分は原子吸光法により測定した。炭水化物は試料量から,測定した水分,タンパク質,脂質,灰分の値を引いた値とした。
2.3アミノ酸分析 
 凍結乾燥粉末0.8gを28mlの5%過塩素酸溶液で抽出し,抽出液を水酸化カリウムで中和したものをアミノ酸分析計(日立製作所製 L-8500)で測定した。
2.4抗酸化能測定 
 凍結乾燥粉末0.5gを25mlのDMSOで抽出したものを抗酸化能測定サンプルとした。抗酸化能は須田らの方法に準じ、活性酸素1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)がラジカル消去物質(抗酸化性物質)が存在すると非ラジカル体に変化し,溶液の紫色が退色するのを利用し,試料を添加した時の紫色の退色度合いを測定することで,抗酸化能の測定を行った。
2.5血圧上昇抑制能測定 
 凍結乾燥粉末0.25gを10mlのリン酸緩衝液(pH8.5)で抽出したものを,適意希釈して用いた。血圧上昇に関わる酵素の1つであるアンジオテンシンT変換酵素(ACE)の阻害能を鈴木らの方法に準じ,37℃で1時間反応させ,生じた生成物(馬尿酸)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。

3.結 果
 加賀野菜の一般成分では,水分,タンパク質,脂質,灰分,リンに関しては同種の野菜と比較しても大きな差はみられなかった。しかし,鉄,ナトリウムは,加賀野菜全般において、比較的多く含まれていた。この結果については,栽培条件,収穫時期などの要素が考えられることから,月別,年次別,栽培法別などの検討がさらに必要である。
 アミノ酸分析では,総遊離アミノ酸量が多いものは,くわい,たけのこ,金沢セリ,千石豆,金沢レンコンであり,総遊離アミノ酸のうち,アスパラギンの占める割合が多かった。また,血圧降下作用や大腸ガン抑制作用など多くの生理機能が報告されているγ-アミノ酪酸(GABA)含量は,金時草に多く含まれ,次いで、タケノコにも多く含まれていた。
 機能性評価では,加賀野菜14品目の中で、ヘタ紫なすの抗酸化能が最も高く,次いで加賀つるまめ,加賀れんこん,金時草,二塚からし菜,赤ずいき,せり,青首大根の順であった(図2)。抗酸化能が高かった野菜について,一般に市販されている野菜との抗酸化能を比較した結果,ほとんどの加賀野菜で,同種の野菜よりも抗酸化能が高くなった。また,ACE阻害能が最も高かったのは二塚からし菜であった。次いで,加賀つるまめ,くわい,ヘタ紫なす,加賀一本太ねぎ,太キュウリ,打木赤皮 栗かぼちゃ,源助大根,たけのこ,金時草,せりの順であった(図3)。特に二塚からし菜には他の野菜と比較して高いACE阻害能が認められた。



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