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 多段蒸留方式による有機汚泥ゼロエミッション処理技術の確立
 
−下水汚泥の化学分析−
 化学食品部 ○藤島夕喜代 北川賀津一 中村静夫
 金沢大学 木津良一

1.目 的
下水道の整備により,生活環境の改善や,川や海などの公共用水域の水質が改善されてきた。しかし,下水処理の過程で発生する大量の余剰汚泥の処理が問題となっている。石川県においても,その一部が焼却やコンポスト化され,建設資材や肥料等に再利用されているものの,大部分は埋立処理に委ねられている。
石川県工業試験場では,下水道普及率の増加に伴って増え続ける下水汚泥の処理技術に関する産学官連携研究開発プロジェクト(プロジェクトリーダー:金沢大学 金岡教授)に参加している。このプロジェクトでは,溶融処理システムと高温集塵技術を組み合わせ,下水汚泥から重金属等を効率良く回収する一方で,利用可能な溶融スラグを製造するシステムの開発を目指している。ここでは,下水汚泥の成分を把握する目的で,石川県内の全地区から汚泥試料を採取し,27元素について含有量分析した結果を報告する。

2.内 容
2.1 下水汚泥の組成
 私たちは一人一日あたりバケツ約30杯の汚水を排出している。汚水は下水処理場に集められ,大きなゴミや土砂を沈めて取り除かれ,有機物を餌として増殖する微生物を利用して,きれいな水に生まれ変わる。水の汚れを食べて,水をきれいにしてくれる微生物を含んだ汚泥は,どんどん増え,集まりあって池の底に沈む。この沈澱物を集めて,水分を搾り取り,固形状となったものが下水汚泥の脱水ケーキであり,主成分は人間の排泄物やそれを餌にする微生物である。そのため,脱水ケーキ中の固形分に占める有機物質の割合は 70〜80%と高く,栄養分である窒素やリンを豊富に含んでいる(図1,表1参照)。
(表1 発熱量および炭水窒素含量)
(図1 脱水ケーキの組成)
2.2 下水汚泥中に含有する微量元素
下水処理の過程で大量に発生する下水汚泥(脱水ケーキ)を県内各地から収集し,含有する微量元素の種類や量,季節変動の有無を確認した(図1〜3)。(図2,3)における値は,乾燥汚泥中の含有量(mg/kg)である。乾燥汚泥中無機成分のうちSi, Fe, P, Ca, Alは各々数%含まれていた。また,MnやAs等の微量元素含有量は,処理場により違いがあり(図2),微量元素含有量は,下水流入水の成分に影響されることがわかった。一方,季節変動による差異は大部分の元素についてほとんど認められないことがわかった(図3)。
(図2 微量元素含有量の各処理場における差)
(図3 ある処理場における下水汚泥中微量元素含有量の季節変動)
2.3 下水汚泥の発熱量
下水汚泥の脱水ケーキの約80%は水分であるが,この水分を取り除き乾燥させた下水汚泥を燃焼させると約15〜20 kJ/gの発熱量が得られた。これは,灯油や石炭には及ばずとも,紙類と同程度かより高い値である。

3.結 果
 下水汚泥に含まれる成分を明らかにすることで,産学官連携研究開発プロジェクトにおいて汚泥中重金属類の分離回収条件を設定するための指針となるデータを得ることができた。



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