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 県産材の高機能化とインテリア空間への応用
 ―スギ、ヒバの圧密木材を利用した新商品開発―
 繊維生活部 ○志甫雅人 梶井紀孝
 林業試験場 木村保典

1.目 的
石川県の林業統計によれば,県内人工林の総面積に対して,スギが72%,またヒバが12%を占めている。現在,これらのスギ,ヒバの多くは,木材として利用できる伐採期を迎えている。しかし市場への安定供給性の悪さやそれに伴うコスト高が原因で,石川県における木材需要の約2割程度を供給するに止まり,県産材が十分に有効活用されているとは言い難い状況である。また,県産材の大半を占めるスギは,軟質材であり表面に傷がつきやすいため,これまで家具や建具,床材などへ利用されることは少なく,用途が限られてきた。
 そこで石川県工業試験場と石川県林業試験場との共同研究で,県産材の有効活用を目的に,スギやヒバを圧密加工によって硬質化させてその用途拡大を図り,具体的な製品開発を行った。

2.内 容
2.1 県産材高度活用研究会の開催
 本研究では,工業試験場,林業試験場,業界が一体となって県産材高度活用研究会を形成し,圧密による材料改質と評価,今日のインテリア・ニーズに対応した具体的な家具,建具,内装材等のデザイン開発と製品試作を行った。
 分担としては,林業試験場が圧密による材料改質及び評価を担当し,工業試験場がインテリア・ニーズの調査及びデザイン開発を担当した。また当初から関連業界企業が参加することによって,業界ニーズを反映した製品開発と業界への成果普及を狙った。今回は,県産材を住宅や家具等へ積極的に利用している“ひと住まい環境ネットワーク北陸”や“白山スギの会”のメンバー企業8社が参加した。
2.2 圧密による材料改質と評価
圧密装置は,石川県林業試験場石川ウッドセンターにある薄板材全層圧密方式のホットプレス装置,富山県林業技術センター木材試験場にある板材表層圧密方式の加熱ロールプレス装置,柱材全層圧密方式の蒸煮圧縮成型装置を用いた。製品試作では,それぞれの圧密装置の特性を活かして,部材として必要な圧密木材を加工した。
また圧密木材の物理的特性評価として,ホットプレス装置を用いて圧密加工したスギ,ヒバの表面硬さについて,林業試験場でブリネル硬さ測定(JIS Z 2101)を行い、硬質材のイタヤカエデと比較しても,圧密加工により,スギ,ヒバが硬質化したことが明らかになった。
2.3 デザイン開発と製品試作
圧密木材を用いた製品試作のためのデザイン開発を,研究会参加企業と工業試験場との共同で行った。参加企業がそれぞれに自社製品として開発したい製品を決定し,工業試験場がコンピュータグラフィックスなどを用いてデザイン開発の技術支援を行った。
また製品試作については研究会参加企業各社がそれぞれ行い、卓上小物製品や照明器具、家具、木製サッシ、内装材など19種類の試作品を完成させた。(図1〜4)
2.4 商品化の検討と今後の展開
製作した試作品に対して,研究会で商品化の検討を行った。小物製品や照明器具,家具については,今後受注生産であれば商品化可能であるとの結論を得た。また木製サッシについては,特にスギの圧密木材を利用した製品に力を入れ,具体的な公共建築物での施工実績を上げていくこととした。さらにパラフィン乾燥のフローリング材と腰板については,パラフィン乾燥工程及び圧密加工工程での技術的な検討が必要であり,商品化にはもう少し時間を要すると考えられた。
 また今回の試作品の製作では,圧密加工後の形状安定性が悪い部材がいくつか見受けられた。このような技術課題を解決するために,独立行政法人産業技術総合研究所基礎素材研究部門木質材料組織制御研究グループや県内木工機械製造企業との共同で,圧密木材のそり,割れの防止,歩留まりの向上,コストの低減を図ることを目的に,加工条件を最適化した圧密装置の研究開発を計画中である。この研究開発によって,国産材や県産材を利用した形状安定性の高い低コストの圧密木材が供給され,木製サッシ,木製デッキなどの住宅産業分野製品や木製ガードレールなどの公共事業への応用が可能になると考えられる。

(図1 照明器具)
(図2 本棚と引き出し)
(図3 木製サッシ)
(図4 机とワゴン)

3.結 果
県産材の圧密加工材を利用した製品開発に関する本研究は,県内公設試験研究機関の共同研究として取り組んだものである。工業試験場と林業試験場との今回の共同研究の結果をまとめると次のとおりである。
(1) 県産材の圧密木材を利用して19種類の製品を試作し,商品化の可能性について検討した。その結果,材料として木材を多く用いる木製サッシの製作などが有効であることが明らかになった。
(2) 商品化に向けての技術的な課題として,圧密木材の形状安定性の向上があるが,その対策として,加工条件を最適化した圧密装置の研究開発が必要である。



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