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 2次元電気泳動遺伝子診断システムの開発
 電子情報部 ○中野幸一 米沢裕司
 化学食品部 井上智実

1.目 的
2次元電気泳動法(RLGS法)は、正常遺伝子と異常遺伝子のスポットパターンの位置と濃度情報を比較することにより遺伝子情報を分析する。これは遺伝子診断において有効な手段である。そのためには、多くの遺伝子情報をRLGS法で分析し、そのデータを蓄積することが重要である。しかし、RLGS法における従来の電気泳動作業は手作業が主であり、解決すべき問題点が多く、容易に実験を行うことができなかった。それらの問題点とは、(1)勘や経験を要し、正確な作業には熟練が必要である。(2)作業が長時間にわたる。(3)作業の正確さが実験結果に影響を及ぼす。(4)RI(放射性同位元素)の使用に伴う危険な作業があり、実験が特定施設に限られる。これらの問題点は、RLGS法を用いる上で大きな制約になっていた。そこで、2次元電気泳動遺伝子診断システムとして、電気泳動作業を自動化する装置とDNA断片を蛍光色素で標識し、蛍光検出により即座に泳動パターンを読み取る装置の開発を行った。その結果、従来の泳動作業が大幅に短縮され、高感度な遺伝子検出が可能になった。
なお、本研究開発は、北陸産業活性化センターが管理法人となって、NEDOの即効型地域新生コンソーシアム研究開発事業(プロジェクトリーダー:渡辺教授(金沢工大))として行われた研究の一部である。

2.内 容
2.1 DNA2次元電気泳動自動化装置(図1)
1次元目のゲルをカラムに固定化することにより、ゲルの自由なハンドリング操作(注入、排出、搬送)が可能である。操作はパソコンによって制御されており、ソフトウェアによる各種設定や遠隔制御等が可能である。
2.2電気泳動パターン自動読み取り装置の開発(図2)
蛍光色素で標識されたDNA2次元泳動パターンを直接読み取る装置である。微弱な蛍光も検出できる高感度の検出器を備え、広い領域のスキャニングも可能である。
(図1) (図2)

3.結 果
(1)2次元電気泳動は煩雑で、安定した結果を得るためには熟練を要する方法である。今回開発した自動化2次元電気泳動装置を用いることにより、電気泳動における半自動化が可能となり、これまで最も熟練を要したゲルの取り扱いが簡略化され、作業効率の大幅アップが可能となった。
(2)泳動パターンの読み取りに要する時間は、例えば、320mm×405mmのゲルを0.4mmピッチでスキャンした場合で約40分である。検出感度は、大腸菌の2次元電気泳動像の読み取りに必要な感度のおよそ120倍であり、大腸菌DNAの解析には十分な感度を確保している。一方、ヒトDNAにおいてはゲノムサイズが大腸菌に比較し600倍程度の大きさを有するため、検出感度を少なくとも現在の5倍上昇させる必要があると思われる。ノイズの抑制や光学系の見直しによる更なる高感度化が今後の課題である。
(3)開発装置の仕様



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