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 染色CAD/CAM研究会における指導事例
  繊維部 ○中島明哉 杉浦由季恵 沢野井康成

1.目 的
近年のアジア諸国からの輸入品増加と国内消費低迷により,繊維業界では、多様な消費者ニーズに対応した高付加価値製品を迅速に開発する必要がある。繊維製品では,"素材=織編地"と"デザイン=色・柄など"の相乗効果による付加価値がとりわけ重要である。
そのため,当場では平成12年度に染色CAD/CAMシステムを整備し,このシステムを活用して製品開発する目的で、染色CAD/CAM研究会を発足させた。現在,研究会には染色加工業6社,織物製造業4社,商工会等6団体を含む計22の団体・企業が参加しており,ITを活用したモノづくりを行ない企画提案・情報発信ができるよう技術支援を行なっている。

2.内 容
2.1 染色CAD/CAMシステムについて
染色CAD/CAMシステムは,色柄デザインの確認や評価ができる"3Dクロスシミュレーション"と,色柄を短時間で生地にプリントできる"テキスタイル用インクジェットプリンター"から構成されている。

(1)3Dクロスシミュレーションについて
 コンピュータ上で動くマネキンに衣服を着せて動かすことで,動きの中での衣服の色柄を確認・評価することができる。また,衣服の型紙データはアパレルCADのDXFデータに対応しているほか,簡易的な作成機能も有している。

(図1 システム概要図 )

(2)インクジェットプリンターについて
広い色域を得ることができる特色3色を含む全8色の分散染料を使用している。プリント幅は最大1550mmで,プリント速度は約6m2/h,解像度は300dpiである。
2.2 研究会における指導・活用事例
染色CAD/CAM研究会における指導・活用事例について紹介する。
(1) インクジェットプリンターを活用した指導事例について

インクジェットプリンターの特徴である多種多様な柄への素早い対応と,グラデーションや多色柄のプリントが容易であること,また,必要個所のみインクを打ち出すため廃液も少なく環境にやさしいことを理解していただくため,インクジェットプリンターを使用した生地サンプルの作成研修を行なった。
ここでは,織物産地への支援活動である浴衣コンテストでの活用事例を紹介する。

平成13年,14年と鳥屋町ファッションショーの中で行なわれた浴衣コンテストにおいて,多数の応募作品の中から最終選考まで残ったデザインを,インクジェットプリンターにて打ち出した。最終選考に残ったデザインは合計で20点前後になり,各絵柄を浴衣一着分程度ずつプリントし,約2週間ほどですべての浴衣を作成した。これにより,最終選考は実際の浴衣をみて行なわれ,コンテスト会場の見物客も一緒に楽しめるコンテストとしてファッションショーの一端を担うことができたと考えている。

(写真1 浴衣コンテスト)

(2)3Dクロスシミュレーションを活用した指導事例について
簡単な型紙の作成やコンピュータマネキンへの衣服の着用,シミュレーション時の色柄デザインの変更等,シミュレーション方法について研修を行なった。

ここでは,ITを活用した繊維製品のデザイン確認・評価に使用した事例を紹介する。
これまで半纏のデザイン決定は,以下のように行なっていた。
@柄の大きさや色使いなどのイメージを聞く。
Aその意向に添ったデザイン画を用意し、確認してもらう。
B無地サンプル(白の半纏)を用意し,丸や四角等の簡単な図形を当てはめながら,手元のデザイン画と照らし合わせ,柄の位置や大きさを頭の中でイメージしていただき,最終調整を行なう。

(図2 デザイン画)

特に上記Bの最終調整の段階では,顧客にとってイメージが掴みにくいため細部の調整などに何度も足を運ばなければならず,かなりの時間がかかっていた。それでも,実際の製品がイメージしていたものと違うといったこともあり得た。その上,動きの中での柄まではイメージできない(実際とかなり違う可能性が高い)というのが現実であった。
しかし,3Dクロスシミュレーションによる動画を使うことで製品のイメージが容易に把握できるようになり,打ち合わせ時間も短縮,相互イメージの共有がはかられるようになった。また,イメージ(サンプル)と製品の差が少なくなっただけでなく,動きの中での柄も確認できるようになった。その他,下に着ているシャツやパンツとのコーディネートも確認できるため,トータルバランスを考慮したデザイン決定ができるようになった。

(図3 シミュレーション結果)

3.結 果
 平成12年度に,染色CAD/CAMシステムを整備し,平成13年度より研究会を通じた技術研修を行なうことで普及指導を行なってきた。
今後ともこのシステムを活用していただき,ITを活用したモノづくりを行なえる,企画提案・情報発信型の企業として県内の企業が育っていくことを期待する。


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