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 山中座の漆室内装飾の開発
  山中漆器連合協同組合 斉官 邦夫*

■技術開発の背景
 山中漆器は400年の歴史を誇り、伝統的な漆器の産地として発展してきました。また昭和40年代からは、ギフト市場を対象にプラスチック製品の生産額を大幅に増大しました。しかし、現在は市場の低迷や消費者のライフスタイルの変化により、産地全体の生産額は最高時の半分以下に落ち込んでいます。産地では対応策として、伝統的な漆器加工技術を活かし、新分野に進出できないか模索してきました。
 その中で、平成13年秋に山中町から山中座及び菊の湯(女性共同浴場)の建築に際し、内装を産地の漆器加工技術を用いて装飾できないか相談がありました。そこで、組合では漆室内装飾の開発事業を立ち上げました。

■技術開発の内容
 山中座及び菊の湯の室内装飾は、平成13年11月から14年10月まで、産地の職人を中心に延べ約2,000人が従事しました。
 梁及び柱、壁板は欅練付集成材を使用し、木地に拭き漆を8回から12回施しています。柱が47本、梁や鴨居、格子等が990本、天井や壁板の総面積170uに及ぶ作業に産地の職人35名が延べ1,300日を要しました。
 また総面積110uのロビー天井は石川県工業試験場と山中漆器産業技術センターが監修し、若手蒔絵職人30名の手で蒔絵を施しました。
 さらに舞台では、手引き轆轤で挽いた1,000個の木環に漆を塗り、江戸小紋調に組み上げました。
 そのほか、扉や壁面パネル、案内図等の随所にも漆技術を用いて装飾を施しました。
ロビーの風景
天井蒔絵

■製品の特徴
 漆特有の質感を活かした高級感のある空間に仕上がりました。また蒔絵による天井装飾や壁面パネルは来場者に大変好評です。

■今後の展開
 組合内に建築事業部を設置し、本事業で培われた漆室内装飾技術と実績を基に、建築業界や家具メーカからの受注に努めます。


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