全文 (PDFファイル:24KB、2ページ)


 ガラス廃棄物のリサイクル技術に関する研究
  化学食品部 ○中村静夫
  ニッコー梶@ 大田剛志

1.目 的
容器包装リサイクル法の施行以後,県内で資源ゴミとして収集されたガラス・びん類の回収量は,平成11年度実績で約8千トンに達し,透明・茶色びんについてはリサイクル率約98%と比率は高い。しかし,黒や緑色のびんは含有している顔料により,廃ガラスカレット(以下,カレット)としての再利用が難しく,回収有効利用されていないのが現状である。従って,その有色込みカレットの有効利用技術の確立が大きな課題となっている。そこで,カレットをタイル原料としての利用を試みたので,その結果について報告する。

2.内 容
2.1 タイル原料としての利用
(1) 高温タイプタイル 
市販タイル用坏土が製造される同じ方法でカレットと他産業廃棄物を同時に粉砕し,産業廃棄物のみから成る坏土からタイルを試作した。他の原料としては,浄水場発生土,フライアッシュ及び陶磁器屑を用いた。調合に際しては,従来のタイル製造設備を適用することを考慮し,従来の坏土と同じ耐火度を有するものとした。なお,焼成温度は従来のタイル焼成温度である1250℃とし,ここでは高温タイプと称する。
 高温タイプ坏土試験の調合を表1に示す。最初に,ポットミルに表1で示した重量比で各々の原料を投入し,水分調整し,所定の時間粉砕した。得られた泥漿を所定の水分まで石膏型で脱水し,湿式プレス機で成形し,試験体を作製した。
焼成後の試験体物性評価により,各産業廃棄物の最適配合条件を求めた。物性評価としては,吸水率,収縮率,材料曲げ強度及びJIS A 5209で定義される曲げ強さ(曲げ破壊荷重)の測定を行った。吸水率は試験体を沸騰水に2時間浸漬後,冷水中に1時間保持する方法である2時間煮沸法で測定し,材料曲げ強度は三点曲げ試験法で求めた。                    

(2)低温タイプタイル
従来よりも焼成温度が200℃低い,1050℃であること特徴とするタイルの試作を試みた。これは,カレットが長石と同等の作用することを考慮し,カレット使用量の上限を50%まで増加することを目的としたものである。浄水場発生土は,成形性の面から40%添加した。低温タイプ坏土試験の調合を表2に示す。試験坏土の作製,成型法及び焼成試験体の物性評価は前節で記述したものと同一手法で行った。
2.2 タイル釉薬としての利用
カレットは釉薬原料のフリットの組成に近く,カレット代替材料としての利用が考えられる。そこで,高温タイプ・低温タイプタイル用釉薬としての適合性について検討した。
高温タイプ用としては,青色ガラス及び蛙目粘土の配合比を変化させて用いた。混合した原料を,ポットミルで水分調整後所定時間粉砕し釉薬とした。一方,低温タイプには,青色ガラスと蛙目粘土を重量比で所定比となるよう混合し,水分調整後所定時間粉砕しカレット泥漿を作製した。この泥漿に既存釉薬を混合したものを釉薬とした。試作釉薬を施釉・焼成した後,タイル釉面,反り及び貫入について観察し良否を評価した。

3.結 果
カレットを粉砕し原料化することにより100%廃棄物を原料とするタイルの製造ができた。焼成温度が1250℃である高温タイプに関してはカレット5%,浄水場発生土30%,フライアッシュ35%及び陶磁器屑30%が最適であり,焼成温度1050℃の低温タイプでは表2の4で示すカレット36%,浄水場発生土40%及びフライアッシュ24%が最適条件であった。いずれの試作タイルの物性も表3に示すように JIS規格値120N/cm を十分に満たすものであった。
カレットの釉薬への利用に関して,高温タイプではカレットの添加量でタイル釉面が大きく変化し,反りの発生も認められた。一方,図1に示した低温タイプではカレットの泥漿と既
存釉薬を用いることで良好な釉薬を得ることが出来た。

図1 低温用タイプタイルの施釉後の外観
高温及び低温の最適配合条件は,前者でカレット60%,蛙目粘土40%が最も良い結果となった。後者ではカレット泥漿60%〜40%,既存釉薬40%〜60%であれば釉薬として使用可能であることが判った。


* トップページ
* 技術ふれあい2001もくじ

概要のページに戻る