全文 (PDFファイル:10KB、1ページ)


 インクジェット記録用光沢紙・フィルムの技術動向
  根上工業株式会社 研究部 吉本克彦*

■技術開発の背景
インクジェット記録用の光沢紙、透明フィルムは、水に濡れると印刷が滲むことがある。これは、光沢紙や透明フィルム表面に塗られている樹脂(インクを吸収乾燥するための樹脂、以下インク受容層)が水に弱いためである。
インク受容層が、光沢紙のツヤやフィルムの透明性を損なわないよう透明で耐水性にも優れていれば、インクジェット印刷物が屋外広告(ポスター、電飾)に利用可能となる。さらに、基材とともにインク受容層に生分解性があれば環境負荷に配慮したものとなる。

■技術開発の内容
インク受容層は、一般にシリカ等の微粒子と樹脂からなる。微粒子は凝集し毛管構造を形成することでインクの吸収を促す効果がある。しかしながら微粒子はインク受容層の透明性不良をもたらす。そこで微粒子を使わずバインダーに新規な親水性高分子を用いることで、インク吸収性がありかつ耐水性を持つインク受容層とすることを検討した。また、生分解性を付与するために天然高分子であるキトサンを材料に用いた。

■特徴
塗工液(試作名334)を市販ポリエステルフィルムの表面に塗布加工し、作成したインクジェット記録用フィルムの評価を行なった。
・ 透明性: 分光光度計(350〜800nm)でほとんど吸収なく透明性に優れる。
・ 耐水性: カラーパターンを印刷し一昼夜放置後、14日間浸水した。各色とも大きな変化は認められず、軽く指触してもインク受容層は剥離しなかった。
・ 耐候性: カラーパターンを印刷し一昼夜放置後、サンシャインウエザーメーター
(63±3℃ 水スプレー18分/120分)にて暴露した。マゼンタの耐候性は十分でないがブラック、シアン、イエローは比較的良好だった。
・ 生分解性:酵素分解試験法(試験管に試作名336試験片と酵素溶液等を加え振とう培養後、全炭素有機濃度と重量残存率を測定)により、インク受容層中のキトサンが酵素により分解し炭酸ガスの発生に至ったことがわかった。自然界においても生分解性挙動が期待できる。

■今後の展開
インクジェット印刷の高速化・高画質化のニーズに対応するべくさらなる検討を進める。以上は、平成11年度独創的研究成果育成事業(科学技術振興事業団、金沢大学、石川県工業試験場)による。


* トップページ
* 技術ふれあい2001もくじ

概要のページに戻る