技術ふれあいミレニアム2000発表会要旨集
環境汚染物質検出バイオセンサの開発
金沢大学工学部・工業試験場
明和工業株式会社 長沖 未来子


■技術開発の背景
 米麦共同乾燥施設に於ける湿式集塵装置ならびに米麦育苗センターに於ける消毒殺菌作用農薬の廃液処理装置等の設計・製作・設置工事を、弊社は事業主体としている。弊社は、湿式集塵装置からの排水ならびに農薬廃液処理装置からの排水をリアルタイムにモニタリングする機器を必要としていた。
 これまで、排水の分析を準公的機関等によって行っているが、農薬別の標準試薬の入手難、高価な分析設備等の理由により、分析のために時間と経費が嵩んでいた。

■技術開発の内容
 汎用性があり、かつリアルタイムに検出可能な技術開発を目的とし、酵素を用いた検出手法の開発を行った。測定には、最初に酵素アセチルコリンエステラーゼ (AChE)およびコリンオキシダーゼ(ChOx)を緩衝溶液に溶解し、混合酵素溶液を調整する。それを、多孔質で白金電極を封入した直径220μmの膜チューブ内に充填し、膜チューブ全体を試料溶液に浸漬する。酵素は膜チューブ内から流出することはないが、試料中(膜外)に存在する基質アセチルコリン(ACh)や阻害物質は、膜チューブ内に容易に拡散・流入する。このAChはAChEによってコリン(Ch)と酢酸に分解され、ChはChOxによって過酸化水素とベタインに分解される。発生した過酸化水素は、白金電極に電圧を印加することにより容易に酸化され、この時に生じる酸化電流値を測定することで、生成した過酸化水素濃度、すなわち酵素活性や基質濃度の測定が可能となり、間接的に水中の溶解有害物質を検出することが可能となる。
 上記の測定原理に基づき試作した装置では汎用の農薬検出が可能であり、水環境監視の一次スクリーニング法として有効であることが判った。そこで、連続かつ自動測定可能な装置の試作を行い、同時に制御等に必要なソフトも開発した。

■製品の特徴
(1) 水環境監視の一次スクリーニング法として有効である。
(2) 無人で水環境の連続リアルタイム自動監視が可能である。
(3) パソコン制御で全ての動作を行っているので人為的測定誤差が解消される。
(4) 繰り返し測定による再現性がある。

■今後の展開
 農薬廃液処理装置の処理水のフィールドテストを続行し、連続自動測定システムにおいてはフィールドモニタリングテストを実施する。また、アンプと本体を一体化させ更なる小型化を試みる。


* 所属:設計グループ、 役職:研究員
代表者名 代表取締役 北野 滋
住   所 〒920-0052 金沢市薬師堂町イ29番地
    TEL 076-261-6468 FAX 076-261-7878

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