技術ふれあいミレニアム2000発表会要旨集
自動張力制御装置の開発
−製織準備工程における糸張力集中管理システム−
繊維部  ○森大介 浜出三郎 新谷隆二
中越機械梶@ 中越茂一


1.目 的
 製織準備工程では糸張力をある一定の状態に維持するために、走行する糸にワッシャと呼ばれる二つの円盤状の重りで摩擦力を調節する方法が用いられている。しかしながら、このような方法では全錘の糸張力を均一に制御することは困難で、織物欠点を発生させる要因となっている。そこで、これらの対策として平成5年度より、張力センサ、張力テンサ、マイクロコンピュータから構成させる自動張力制御装置の開発を行った。これはマイクロコンピュータ1台で最大8錘の制御が可能で、従来の張力調節方法に比べ、安定性や過渡特性に優れている。本研究は、これらをホストコンピュータによる集中管理によって、巻返、撚糸、及び整経工程等の製織準備工程や糸種に対応できる張力制御技術と糸張力値の経時変化等のデータから不良品の発生を防止するシステムを開発することを目的としている。

2.内 容
 製織準備工程では機種によって同時に100〜1,000錘の糸が取り扱われ、そのうち1錘でも異常張力が作用すると欠点となる。そこで、張力センサと張力テンサは全錘に取り付けられ個別に制御される必要があり、操作性と低コスト化を考慮しつつ多錘化に対応できるシステムの開発を行った。図1に試作した自動張力制御装置、図2にこれがパーンワインダー装置に装着されている様子を示す。

2.1 張力センサ
 試作した張力センサは、2個の固定プーリ、板バネ、及びその先端に取り付けられた動プーリで構成されている。糸は3個のプーリに掛けられ、糸張力値によって動プーリの位置が変化し、それにともなって板バネに張り付けられているひずみゲージの出力電圧が変化することを利用して張力値を検出する。この張力センサの測定レンジは0〜100gfである。
図1 自動張力制御装置   図2 装着例

2.2 張力テンサ
 図3に開発した張力テンサの内部構造を示す。開発に際して張力センサ同様、小型化と低コスト化を考慮した。動作原理はロータ内側面の磁性体と電磁石間の吸引力を用いて、ロータ回転トルクを変更している。糸導入ガイドを通過後の糸はロータに螺旋状に巻き付けられ糸送出ガイドを通過する際、ロータ回転トルクを変えることで糸張力を調節する。この張力テンサの最大作用張力は、糸速度200m/minで70 gfである。
図3 張力テンサの内部

図5 張力集中管理システム
 
図6 張力制御の例
2.3 糸張力集中管理システム
 開発した糸張力集中管理システムはホストコンピュータ1台に対して張力センサと張力テンサが最大1,024錘分取り付け可能で、多錘化が十分考慮されている。この糸張力集中管理システムは、ホストコンピュータの端末で制御張力値を設定し、錘毎に異なった張力値で制御したり、 糸の巻工程中に制御張力値を変更することができる。また、この糸張力集中管理システムは糸張力の経時変化のデータより糸切れや異常張力の発生回数等を記録し不良品の発生を防止することが可能である。
 図6に張力制御の結果例を示す。これは張力制御値を20gfから30gfに変更した場合のディスプレイの表示で、このよにリアルタイムで制御状態を確認することができる。また、図6では目標値に対して3gf以内で制御されていることがわかる。さらに出荷時に品種、ロット番号、繊度、作業日時等のデータが記録でき、染色加工後の織物欠点が発生した場合のクレーム処理に役立てることができる。


3.結 果
 開発した糸張力集中管理システムは、巻返や整経工程等の製織準備工程や異なった糸種に対応でき、また、張力値の経時変化等のデータから不良品の発生を防止することができる。この装置は中越機械(株)と共同で「ファジイ張力制御システム」として製品化を行った。


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