技術ふれあいミレニアム2000発表会要旨集
超高圧技術応用による編・織物の新加工方法の開発
繊 維 部 ○木水貢 新保善正 山本孝 守田啓輔
加越産業梶@ 安部俊和


1.目 的
 近年、有効成分抽出、合成による材料開発や化学物質の分解などの研究において、数十MPaを超える高い圧力を利用した超臨界流体や超高圧の状態での処理が試みられ、そのひとつとして超臨界炭酸ガスを利用した研究が染色仕上げ加工の分野で進められている。
 本研究では、これまでに繊維加工では研究されていない100MPaを超える高圧下での染色仕上げ加工技術について検討を行っている。本報告では、100MPaを越える超高圧下におけるポリエステル織物のアルカリ減量加工と綿織物の反応染料染色について検討した結果を報告する。

2.内 容
2.1 ポリエステル織物の減量加工
 ポリエステル織物のアルカリ減量加工は、織物の風合いを改善させるために織物表面をアルカリ加水分解させる処理である。今回は、ポリエステル織物(JIS試験用標準白布)と各濃度(10,20,30,50,100%OWF)で調製した水酸化ナトリウム水溶液を浴比1:5の割合でポリ袋の中に入れ密閉し、図1の高圧処理装置を用いて各条件(圧力50,100,200,300,392MPa:温度60,80,100℃:時間5,10,20,30,45,60分)で高圧処理を行った。処理後、減量加工試料を蒸留水で充分に洗浄し、風乾させた。このようにアルカリ減量加工した試料については重量変化及び走査型電子顕微鏡による表面観察を行った。

2.2 綿織物の反応染色

 綿標準布を、各条件で調製した染色液中に1分間浸漬後、ピックアップが100%となるようにマングルでパディング処理し、織物を袋内に入れ、密封し加圧用試料とした。染料は、Sumifix Red B(C.I.Reactive Red 22)を用いた。加圧条件として、圧力(100,300,500,700MPa)と処理温度(60,80,90℃)を変え、処理時間は10分とした。また、染色液においては、染料濃度(1,5,10,50g/l)、アルカリ濃度(0.1,0.5,1.0,0.2,0.4,0.6g/l)及びアルカリ剤( NaCO,NaHCO)の種類を変え、それぞれの条件における染色性について比較した。

図1 超高圧処理装置   図2 処理温度によるアルカリ減量率の変化

3.結 果

3.1 ポリエステル織物の減量加工
 図2は、処理温度による減量率の変化を示す。処理温度が高くなるのに伴い減量率は増加し、その傾向は圧力が増加することにより高くなった。処理温度100℃、アルカリ高濃度(100%OWF)で処理した試料では、処理時間5分程度で減量率が約70%を越え、10分後には織物の形状を維持できない状態まで減量されることが確認された。
 図3に、アルカリ濃度100%OWF、温度100℃、圧力300MPa、時間5分の条件で高圧処理し、減量率が約70%となった試料の走査電子顕微鏡表面観察写真を示す。この写真から、超高圧下でのアルカリ減量加工は、高い圧力の影響により 100℃以下の温度でしかも短時間での処理にも関わらず非常に大きな減量率が得られ、またその反応は繊維表面で均一に起こることが確認された。
図3 減量率約70%試料の電子顕微鏡表面写真

3.2 綿織物の反応染色

 図4は、染料濃度10g/l、処理圧力 100MPaにおいて、処理温度よる染色性の変化を示したものである。処理温度の増加に伴い、色濃度値Cが増加している。図5に染料濃度10g/l、処理圧力100MPaでNaCOと NaHCOのアルカリ濃度による染色性の変化を示す。NaCO濃度と NaHCO濃度による影響を比較すると、NaCOの方がアルカリ濃度に対し色濃度値Cの変化が顕著であることが確認された。
図4 処理温度による染色性   図5 アルカリ濃度による染色性


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