技術ふれあいミレニアム2000発表会要旨集
ISO14001環境活動と企業支援
環境管理事務局 ○奥野 孝 森田正栄 西村芳典 舟木克之
            土定育英 漢野救泰 安井治之 北川賀津一


1.目 的
 県では,自然と人との共生を図り豊かな社会の構築を目指して「石川県環境基本条例」を制定している。工業試験場においても,業務のあらゆる面で地球環境に配慮して行動することを基本理念とする「国際環境規格(ISO14001)」の取得に取り組むこととした。さらに,これから取得を目指す県内中小企業に対し,工業試験場がISO14001の取得で蓄積したノウハウを活用して,支援する。

2.内 容
2.1 国際環境規格(ISO14001)
 この規格は、組織の環境マネジメントシステムの審査登録及び自己宣言のための要求事項を規定するシステムの仕様で、一般要求事項を除いて、17の要求事項で構成されている。これらの要求事項は、環境方針、計画、実施及び運用、点検及び是正処置、経営層による見直しに分けられ、図1のようなモデルとなる。

2.2 組 織
 環境マネジメントシステムを効果的に進めるために,環境管理責任者の下に環境管理委員会を設置すると共に事務局も設置し,図2のような組織を編成した。

図1 環境マネジメントシステムモデル   図2 環境マネジメントシステムの運用組織

2.3 環境方針
 環境方針は,場長が制定し,当場の事業活動による著しい環境側面,システムの継続的改善と汚染の予防,関連する法規制遵守の約束,環境目的及び目標の設定,見直しの枠組みを与えるもので,全職員に周知すると共に来場者や一般の人々に公開している。下記に当場の環境方針の一部を示す。

 ◆◆◆ 環 境 方 針 ◆◆◆
 石川県工業試験場は,石川県の産業支援のための研究・依頼試験・指導相談等の事業活動を踏まえ,省エネルギー,省資源,廃棄物の削減,リサイクル技術の開発等を図り,以下に示す事業により環境保全活動を推進する。
事業活動の環境に与える影響を的確に捉え,環境保全を配慮して業務を推進する。
環境保全のための環境マネジメントシステムの継続的な改善及び汚染の予防に努める。
環境関連の法規,条例及び同意するその他の要求事項を遵守する。
環境保全活動の推進にあたり,下記項目を重点課題として,環境目的及び目標を設定すると共に,定期的に見直しを行う。
 
(1) クリーンなエネルギーである太陽光発電システムの活用を図ると共に,省エネルギーを推進する。
(2) 資源の有効活用を図るため廃棄物の分別収集やコピー用紙の使用量の削減,さらに,リサイクルに関する技術開発,研究指導を積極的に実施する。
(3) 事業活動で発生する産業廃棄物,特別管理産業廃棄物の管理を徹底すると共に削減する。
環境マネジメントシステムを構築,文書化し,全職員に周知徹底を図る。
この環境方針は,来場者や一般の人々に公開する。特に,見学者に対しては工業試験場の事業内容と共に環境方針について説明する。

2.4 計 画
2.4.1 環境側面
 工業試験場は,県内産業支援のための指導相談・依頼試験・研究事業活動に関連する過去,現在及び今後計画するであろう事業の通常の実施状況や緊急事態等も考慮した環境側面の抽出,環境影響の評価を行い,著しい環境側面を管理対象として特定した(表1)。環境影響評価は、「環境影響評価表」を作成して行った。評価のための判断基準は、量・発生の可能性・影響の重大性を可能な限り定量評価するようにした。環境側面の継続的な見直しは年1回,更に見直しの必要が生じた時には,随時行い,環境側面を最新のものとしている。

表1 環境影響評価の結果
環境側面と環境影響(定常時)
指導、依頼試験、研究業務及び空調等に年間143万kwhの電力、142kLのA重油及び290m3のプロパンガスを使用している。(環境影響:地球温暖化、資源枯渇)
依頼試験、研究業務等で産業廃棄物を年間24t排出している。また排水処理施設、依頼試験等から特別管理産業廃棄物が年間100kg排出される。(環境影響:廃棄物処分能力圧迫)
指導、依頼試験、研究業務等でA4換算で年間74万枚ものコピー用紙を使用している。(環境影響:熱帯雨林)
依頼試験、研究業務等で特別管理産業廃棄物に相当する濃厚廃液が年間900L排出され、一時保管している。(環境影響:水質汚濁、土壌汚染)
依頼試験、研究業務等で多種類の毒物、劇物を購入、使用している。(環境影響:水質汚濁化学物質)
環境側面と環境影響(緊急時)
依頼試験、研究等で排出される濃厚系廃液、汚泥、燃え殻、廃油等が地震や火災発生時に流出や引火の可能性がある。(環境影響:水質汚濁、大気汚染、土壌汚染)
保管中の毒物・劇物等の薬品容器が破損し、内容物が流出する。(環境影響:水質汚濁、大気汚染、土壌汚染)
環境側面と環境影響(間接影響)
環境関連研究、企業への技術移転や指導・相談により、環境負荷の軽減が図られる。(環境影響:地球温暖化、資源枯渇、廃棄物処分能力、有益な環境影響)
廃棄物処理を委託する処理業者(A社)の搬送及び処理。(環境影響:地下水汚染、土壌汚染)
事務用品調達の入札で環境を考慮しない取引業者を選択する可能性がある。(環境影響:熱帯雨林、廃棄物処理能力)

2.4.2 法的要求事項
 環境に関しては公害(大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭)は当然であり,毒物・劇物の管理,省エネルギー,廃棄物の処理,さらに電波法についても確認する必要があった。この中でも特に電波法は,試験分析機器,製造機器などの高周波利用設備に関係する分かりにくい法律であり,設備を導入する場合に,郵政省の管轄である北陸電気通信管理局ではなく,メーカーや販売店に確認する必要があった。

2.4.3 目的・目標及び環境マネジメントプログラム
 環境目的は,著しい環境側面を基に場長が策定した環境方針と適合性を取り全場と各部のものを作成した。次に目的から目標,さらに,責任と権限,目的及び目標を達成する手段とスケジュールを入れたプログラムを作成した。全場及び各部の環境マネジメントプログラム進捗状況確認表作成時には,目標とする年度の各部,各月の電力,A重油,コピー用紙の使用量等の記録が必要であるが,全場のデータしかなく,各部のデータを取りながら比例配分して各部の基礎データとした。更に,達成率の確認の間隔が重要である。つまり不適合が発生した場合に年度内に目標を達成できるように修正を加えられる確認の間隔が必要であるため,12月までは,不適合が2ヶ月連続した場合に対策を講じ,1月以降は1ヶ月でも不適合が発生したら直ちに対策を施した。

2.5 実施及び運用
 この項目には,(1)体制及び責任,(2)訓練,自覚及び能力,(3)コミュニケーション(情報伝達),(4)環境マネジメントシステム文書,(5)文書管理,(6)運用管理,(7)緊急事態への準備及び対応,の要求事項があるが,ここでは,環境マネジメントシステム文書と緊急事態への準備及び対応について述べる。

2.5.1 環境マネジメントシステム文書
 環境マネジメントシステム文書とは,表2に示す第1レベルの文書である「環境管理マニュアル」で,それを補足する文書が第2レベル文書の「規定」,「基準」でその体系を表2の下部に示す。

2.5.2 緊急事態への準備及び対応
 事故及び緊急事態の可能性とそれに関連する環境影響評価を実施し,この結果に基づき,緊急事態への準備と対応が必要な業務を明確にし,その業務について環境影響を防止,軽減するための手順を定めた。
緊急事態として,「燃料受入作業」,「毒物・劇物の取扱」等の対策を講じ,訓練する必要があるため,対策用品を揃え,全場及び各部で訓練を行った。その結果に問題点がないか確認すると共に写真を撮り(写真1),記録に残した。

2.6 企業支援
 工業試験場の取得ノウハウを活用して,県内企業の認証取得を支援するため,個々の企業の電話による相談,企業での指導(緊急指導),さらに環境マネジメントシステム研究会開催等を行った。この研究会は,国際環境規格取得を目指す中小企業による研究会で,平成10年度は,事務局と企業の担当者が共にISO14001の要求事項の内容を把握,認証を取得した食品と建機関係の企業見学,I S O 14001関連ソフト調査について実施した。
 平成11年度は,4回シリーズで技術アドバイザーの方に講師をお願いしてISO14001の基礎と指導事例による研究会を開催した。


3.結 果

 平成10年度よりISO14001認証取得の活動を進め,平成11年12月に初動審査, 12年2月に本審査を受け,2月23日に国際環境規格ISO14001の認証を取得した。
 今後は,この認証取得で得たノウハウを活用すると共に,ISO14001の継続的な改善を図るため,下記内容を推進する。
(1) 工業試験場が国際環境規格ISO14001の取得ノウハウを活用した県内企業の取得支援
(2) 環境マネジメントシステム研究会を継続
(3) 環境関連の研究を7テーマ以上,指導を3テーマ以上実施
(4) 太陽光発電システム(200kW)の活用と共に,エネルギー使用量の削減
(5) 資源の有効活用を図るため,廃棄物の分別収集やコピー用紙の使用量の削減
(6) 産業廃棄物や特別管理産業廃棄物の管理の徹底と削減
(7) 依頼試験や研究などで使用する毒物・劇物の管理徹底
表2 環境マネジメントシステム文書体系
写真1 燃料受入作業


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