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2.1 ニーズ分析方法
そこで,的確なニーズ分析を行うためには,製品開発におけるニーズ分析(図1)において,(1)ユーザの視点,(2)ニーズの個人差,(3)ニーズの階層性,(4)ニーズの可視化3)の4点に着目した定量的な分析が重要と考えられる。 本研究では,これらの要件を満たすための一つの試みとして,主観的評価とシステムズ・アプローチを組み合わせた手法であるAHP(Analytic Hierarchy Process)4)を利用した。AHPは,定量的な分析では扱いきれない類の意思決定問題においてユーザの主観や直感に基づいて評価項目あるいは代替案の重要度を数量化する感性評価の一手法である。具体的には,まず代替案選択のための評価項目を階層化した評価構造を作り,次にユーザが2個ずつの評価項目の組み合わについて一対比較により重要性を判断していくことで,最終的にはそのユーザ個人のニーズを評価項目と代替案の重要度として推定する。 このAHPの利用により上述のニーズ分析の要件を満たすことが可能と考える。またニーズの可視化ついては,AHPによる感性評価をコンピュータ画面上に階層的にグラフ表示させ,画面上に視覚化された評価結果を客観的に見ながら,ニーズを分析できるようにした。 |
(1) | 評価構造データの作成,一対比較,代替案評価までマウス操作を基本に行える。 |
(2) | マルチウインドウ画面表示により,任意の階層レベルの任意の評価項目から見た評価結果をグラフ表示し,多面的に代替案評価の分析が行える。 |
(3) | 評価結果が自分の直感あるいは予想と食い違う場合,重要度の修正支援機能により,速やかに納得のいく重要度に修正できる6)。また意図的に重要度を操作し,問題を様々な異なる視点から分析し,より深く理解することに役立てられる。 |
(4) | 情報不足で一対比較の判断ができない場合や,評価項目の数が多い場合に,ユーザの代わりに整合の取れた一対比較値を計算により求めることで,ユーザの一対比較判断の作業負担を軽減できる。 |
(5) | 代替案の評価には,統計値などの客観的な数値データを使用できるほか,代替案の画像を登録,表示させて一対比較を行える。 |
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図2 建具デザインにおけるニーズ分析画面例 |
1) | 神田範明:ヒットを生む商品企画七つ道具,日科技連出版社 (2000). |
2) | 讃井純一郎:ユーザニーズの可視化技術,企業診断,pp.31-38(1995). |
3) | 加藤直孝,中條雅庸,國藤進:合意形成プロセスを重視したグループ意思決定支援システムの開発,情報処理学会論文誌,Vol.38,No.12,pp.2629-2639(1997). |
4) | 刀根薫,真鍋龍太郎:AHP事例集,日科技連出版(1990). |
5) | 加藤直孝,中條雅庸,國藤進:AHP支援ソフトウェアAHP-aid for Windows,日本OR学会春季研究発表会アブストラクト集,pp.96-97(1997). |
6) | 加藤直孝,平石邦彦,國藤進:グループ意思決定における重要度の感度係数を用いたトレードオフ分析支援について,日本OR学会春季研究発表会アブストラクト集,pp.94-95(1997). |
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