薄板FRP用穴あけドリルの開発  ―航空機パネル部品加工の効率化に向けて―

 最新鋭旅客機では、燃費の向上や機内の気圧を高く維持するため、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)が機体の構造体や部品の多くに使用されていることはよく知られています。

 このFRP材料は、高強度繊維が積層されているため、加工部品として切削する場合には、"繊維の毛羽立ち"や"表層の剥離"が問題となります。特に、板厚の薄いパネル部品にドリルで穴あけ加工する場合、材料がたわみ易いことから、その反動による跳ね返りが大きく、これらの問題が一層生じ易くなります(図1)。

 そこで、東興産業(株)(かほく市)、メカトロ・アソシエーツ(株)(小松市)と取り組んだ航空機パネル部品加工の効率化に関する研究(経済産業省:H22戦略的基盤技術高度化支援事業)において、先端に小さなドリルを備え、後段には鋭角の外周刃を持つ「段付き複合アングルドリル」を提案、試作しました。

 この結果、穴あけ加工時の切削抵抗を2段階に分散することにより、パネル部品のたわみを小さく抑え、さらに外周刃の効果を加えることにより毛羽立ちを防止することができました(図2)。

 FRP材料の切削加工技術にご関心のある方は、ぜひご相談ください。


図1 従来ドリルによる表層剥離の発生


図2 開発ドリルと加工穴の概観

 

担当:機械金属部 廣崎 憲一(ひろさき けんいち)

専門:機械加工、精密測定

一言:新たな加工技術の開発を支援します。