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コンピュータによる解析技術(CAE)の多くは、製品の設計段階で利用されています。製品が外力を受けたときの変形挙動や応力分布等を解析することによって、構成する部品形状や材質選択の最適化を図り、試作回数を低減するためです。 近年、設計段階のみならず、製造段階においても、短納期化、低コスト化、高品質・高付加価値化、省エネ等を目的として、CAEの利用が注目されています。ものづくりのシミュレーション技術の中で、現在最も導入効果が大きい分野の一つとして注目されるのが鋳造分野です。 鋳造品の製造現場では、溶融した金属が鋳型中を流れる過程や凝固過程をイメージし、試作を繰り返して最適な鋳造方案*を探求しています。高温で溶けた金属が流れる様子や固まる様子を直接観察することは難しく、鋳造方案の設計は技術者の勘や経験に頼るところが大きくなっています。職人的要素が高い領域において、シミュレーション解析結果と製造現場のノウハウを融合させて行くことが鋳造シミュレーション利用による最適方案決定のポイントとなっています。(図1、図2)。 IT技術が革新的に進む現在において、3次元CADでの製品設計が普及し、受注した製品の図面データに鋳造方案を加えるだけで解析用データとして用いることが可能となりつつあります。また、鋳造過程で発生する技術ノウハウを解析情報とともにデジタル化して保存することで、品質及び生産性の向上に結びつける考えも全国的に定着しつつあります。石川県内の鋳造業界にCAEを普及させ、ものづくりの効率化を支援するため、工業試験場では、平成17年9月に鋳造シミュレーションシステム**を導入しました。現在、解析結果を県内企業に持ち込み、企業技術者と直接検討会を行うことでシミュレーション技術の普及に努めています(図3)。さらに、石川県鋳物工業協同組合、石川県合金鋳造工業協同組合の協力を得て、鋳造シミュレーション研究会(仮称)を発足させ、技術支援と若手鋳造技術者の育成も行っていく予定です。 |
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図1 解析結果の例 | 図2 鋳造シミュレーション利用による方案最適化 |
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図3 県内企業における方案検討会 |
* | 鋳造方案(鋳造のための設計図) 主に溶融金属を流す道筋の作り方を意味し、製品歩留まりや不良率に大きく作用する。 |
** | 鋳造シミュレーションシステム 日本自転車等機械工業振興補助事業により設備導入 |
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担 当 | : | 機械金属部 藤井要(ふじいかなめ) |
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専 門 | : | 金属工学 |
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一 言 | : | 全ての産業の基盤は、部材を製造する素形材産業にあります。 |
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