数値解析によるアンテナの設計
〜産学官による電波応用技術開発〜


 アンテナの開発には、試行錯誤的な要素が多く、膨大な時間を費やすため、計算による設計時間の短縮が望まれています。さらに、複雑な形状をしたアンテナの設計では、理論計算は不可能であり、数値計算を行う必要があります。このため、電波の反射、透過、インピーダンスなどの特性を数値的に計算する手法として、電波の時間的な移動が計算でき、コンピュータ画面上で伝搬機構が可視化できる有限時間領域差分法(FDTD)が有効であると考えられています。
  ここでは、携帯電話、無線LANなどに用途拡大が望めるパッチアンテナに着目し、入力インピーダンス、共振点などの計算を行うことによるアンテナの設計及び試作を行いました。その結果、計算結果と実測結果がよく一致したことから、数値解析の有効性を確認し、設計開発時間を短縮できることが分かりました。次に、これらの結果を基に、数値解析を用いて、無線LANで利用されている2.45GHz帯、5.2GHz帯の2周波で共振するアンテナの設計・試作を行ったところ、各共振周波数における電力半値幅は100MHz以上を有する性能の良いアンテナとなりました。なお、今回のアンテナの設計に当たり、(株)エフイーシー(金沢市)、ニッコー(株)(白山市)、並びに金沢大学との産学官共同で開発を行いました。
  今後は、アンテナだけではなく、通信など他の電波利用分野にもFDTD法による設計を適用し、開発時間の短縮を図っていきます。

2周波共用パッチアンテナの試作品



担 当 電子情報部 吉村慶之 (よしむらよしゆき)
専 門 電波シールド、電波吸収
一 言 電波をもっと有効に利用できるような技術開発に努めています。



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