微生物の長期保存が可能に
〜工試単離微生物の長期保存に効果〜


 近年、微生物は厨房のグリーストラップに蓄積された油脂の分解や燃料油流出現場の浄化などに利用されるようになってきました。また、工場跡地などの汚染された土壌の浄化手段としても用いられつつあります。これらの現場では、一般的に微生物を製剤化して使用しています。
 工業試験場では、平成12年度より3年間、微生物を用いた廃油処理技術の開発に取り組み、その過程で植物油を90%以上分解する新規微生物の単離に成功しました。現在、この微生物は製品化され、油処理現場で使用されています。
 さらに本微生物の実用性を高めるために、保存性の向上を試みました。一般的には、微生物の保存剤として10%スキムミルクを用い、凍結乾燥することにより製剤化していますが、ここでは、10%スキムミルクに替わる最適な保存剤を検討しました。
 保存剤は、食品などに添加されている安全性の高い物質を用い、保存効果については、加速試験(40℃、2ヶ月で1年相当)を行い、菌の生存数により評価しました。その結果、図に示すようにグルタミン酸ナトリウムを保存剤として使用した場合、最も保存性が向上し、加速試験2ヶ月後の結果では、10%スキムミルクを用いた方法に比べ、約3000倍の数の菌が生存していました。
 微生物製剤の長期保存が可能となったことで、使用期限が延び、実用性が向上しました。

微生物の製剤化方法


担当 化学食品部 井上智実 (いのうえともみ)
専門 微生物工学
一言 微生物は様々な産業分野で活用されています。



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