2.2 欠点の観察
 欠点箇所をよく観察し,その状態,性状を十分に理解することが必要である。観察した代表的な欠点とこれらの発生要因について以下に示す。
(1) 筋状の欠点
 たて糸またはよこ糸の1本あるいは数本が比較的長さを持った欠点で,次のものが考えられる。 おさ筋,おさ傷,ヘルド傷,異原糸混入,たて糸つり,ヒケ,引き込み違い等。
(2) 段状の欠点
 たて糸方向にある幅を持った欠点で,次のものが考えられる。
 機械段,しぼ段等。
(3)むら状,カスリ状の欠点
 たて方向またはよこ方向にむら,カスリのある欠点で,次のものが考えられる。
 たて縞,張力むら,パーン引け,しぼむら,染めむら,ひずれ,ガイド傷による溶融等。
(4) スポット状の欠点
 ある部分に発生した欠点で,次のものが考えられる。
 汚れ,異物の織り込み,目よれ,しわ等。

 2.3 SEMによる欠点の解析
 前項目のような欠点をSEMを用いて観察し,さらに解析する場合,当場では,以下のような手順で行っている。
(1) 欠点全体の形状,例えば,周期性,表裏の状態,糸の形態等を把握する。場合によっては実体顕微鏡等も用いて観察する。
(2) 観察試料とする代表的な欠点部分および比較となる正常部分を適正にサンプリングする。
(3) 試料の作製

上記のように前処理を丁寧にすれば,正確で効率よく観察できる。

3.解析事例
 3.1 たて筋(おさ傷)
 3.1.1 概況
品 名:ポリエステルサテン
糸使い:たて糸 PE 50d/36f、よこ糸 PE 50d/24f
発生状況:織物の右端から約30cmにわたり白く光った筋がランダムに発現している。また,2〜3mm位の幅を持った箇所もある。

 3.1.2 考察
 電子顕微鏡で観察した結果,異常部分はたて糸のフィラメントの一部に損傷が見られる(図2)。さらに拡大すると,糸の表面が引っかかれてささくれ立っていることが判明した(図3)。おさに傷がある場合に発現する損傷に類似しており,本欠点はおさ傷が原因で発生したものと推察される。

図2  異常部分200倍/図3  異常部分1000倍

 3.2 たて筋(綜絖傷)
 3.2.1 概況
品 名:ポリエステル織物
糸使い:たて糸 PE 30d/1f、よこ糸 PE 50d/24f,S1000T/m
発生状況:生機検査では発見できなかったが,加工後濃染したたて筋が発生した。原糸が起因しているのではないかとクレームがあった。

 3.2.2 考察
 電子顕微鏡で観察した結果,異常部分のたて糸の表面が損傷している(図4)。さらに拡大すると,この傷は糸の長さ方向に対して横(直角)に溝を付けたように削られているのが判明した(図5)。本欠点は,綜絖の傷が原因で発生したものと推察される。

図4  異常部分80倍/図5  異常部分のたて糸側面400倍

 3.3 よこむら(白沢現象)
 3.3.1 概況
品 名:ポリエステルバックサテン
糸使い:たて糸 PE 100d/48f,S,Z 2000T/m,S 800T/m
    よこ糸 PE 180d/60f,S,Z 1700T/m
発生状況:生機検査では発見されず,染色加工後織物の裏側によこ糸方向に沿って,2〜3cm位の長さでチカチカと光る白沢現象(カスリ状)が発生している。



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