前の間欠噴霧とは試験条件が異なるものの,1300時間を超える人造大理石の長期促進耐候性試験を一般のプラスチックを含めて行った。人造大理石の色差と光沢の結果を図11,12にそれぞれ示す。横軸には短期試験と同じく紫外線照射時間と紫外線照射量を併記してあるが,装置の調整により紫外線照射量が幾分低下している。いずれの人造大理石においてもそれぞれ2個の試料を用いて試験を行った。図11に示すように,各試料とも色差は紫外線の照射時間に対して大きくなり,紫外線により劣化が進んでいる。最も劣化しているのは,短期試験と同じ不飽和ポリエステル系の白であり,耐候性試験開始時より常に他の試料より色差は大きい。次に色差が大きいのはピンクであるが,500時間まではまだ色差は小さく,それ以後大きくなっている。さらに,不飽和ポリエステル系(ピンク)においては試料の切断面から色の変化も観察され始めた。これは切断面近傍に限られることから,切断面から水が侵入し劣化したと考えられる。アクリル系は短期試験よりも明瞭に色差の増大が確認できるが,400時間辺りまでは変化も小さい。これを過ぎると色差は大きくなり,1200時間辺りになると不飽和ポリエステル系のピンクとほとんど差はない。
図11 人造大理石の長期促進耐候性試験による色差の変化
図12 人造大理石の長期促進耐候性試験による光沢の変化
図12は光沢残存率を表しているが,アクリル系についてはほとんど変化はない。一方,不飽和ポリエステル系では500時間を過ぎると光沢が大きく減少している。今回の試験では,噴霧に使用していた水を精製するイオン交換樹脂の性能低下により,水に溶け込んでいたカルシウムイオン等を除去できず,不飽和ポリエステル系の表面に付着したためである。浴槽や洗面台に使用する水を対象に考えると,この試験が実際の使用環境に近い。イオン交換樹脂の性能が低下していた時間においてアクリル系の光沢が若干低下し,イオン交換樹脂を取り替えた後に光沢が元に戻っていることから,アクリル系には汚れが付着しにくく,また取れ易いことがわかる。不飽和ポリエステル系では光沢が低下したままであることから,付着した汚れは取れ難く,人造大理石本体の色差の変化は今回の試験結果よりも小さくなると推察される。
不飽和ポリエステル系においてピンクと白の人造大理石を比較すると色差の変化は白の試料の方が大きくなっている。熱水による劣化においても,試験方法が異なったものの白の試料の方が劣化が大きいことが示唆された10)。これらの結果より不飽和ポリエステル系人造大理石においては,熱水や紫外線による劣化には色の影響が大きく,色の選定にあたっては慎重に考慮する必要がある。
次に,一般のプラスチックについての色差と光沢の変化を図13,14にそれぞれ示すが,PMMAは色差や光沢が無いのに対して,他の樹脂はほとんどが色差または光沢が人造大理石以上に変化していることから,PMMAが最も耐候性に優れている。同じ樹脂でも色差や光沢の変化に差があるのは紫外線吸収剤や酸化防止剤の添加によるものと思われる。
図13 各種樹脂の長期促進耐候性試験による色差の変化
図14 各種樹脂の長期促進耐候性試験による光沢の変化
人造大理石とは熱可塑性,熱硬化性と樹脂のタイプは異なるもののアクリル系が耐候性に優れているが,人造大理石は熱可塑性ほどの耐候性を示していない。これは人造大理石には充填材が入っているために,充填材と樹脂との界面が影響していると考えられる。今後は充填材と樹脂の界面を含めて耐候性についても検討を進める必要がある。
人造大理石の促進耐候性試験による劣化について検討したところ以下の結果が得られた。
参考文献