2.3.2 織額パネル(あやめ、りんどう)
    コンピュータジャカードシステムによって、原画を基に多色使いによる織額パネルを製作した。 原画を画像処理して、色の配分や配列等を組み合せ、たて糸にポリエステル双糸を、とじ糸にナイロンモノフィラメントを用いて、6:1の割合でポリエステル糸を押えた。よこ糸には先染糸11色の多色使いによる色糸表現を表した、図7に示す織額「あやめ」ならびに、図8に示す5色使いの「りんどう」の花柄模様を絵画調に工夫し、織物表面に浮き上がらせるように配色した織額パネルである。

    図7 織額パネル「あやめ」
    図8 織額パネル「りんどう」

    2.3.3 ファンシーストライプ
     図9に示すように、イタリー式撚糸機のスピンドル部分を中空スピンドルに改造した。         よこ糸に先染のカシミヤと綿の混紡糸を芯にしてポリエステルスパン糸をカバーリングし、特に芯糸に対して巻付け間隔に差を付け、白黒の濃淡が明確に出るようなネップ糸を製作した(図10)。       この改造によって飾り撚糸機を使用しなくても、安価でしかも簡単にネップ糸を製造することができ、芯糸およびボビン巻の張力加減によって特殊な糸の製造が可能となった。たて、よこ朱子組織でストライプ柄とし、ネップ糸を織り込むことにより、ファンシー効果を表した(図11)。

    図9  イタリー撚糸機の改造
    図10 ネップ糸(白黒濃淡)
    図11 ファンシーストライプ

    2.3.4 ニユー梳毛ジャカードカーテン
    よこ糸に新合繊の梳毛調複合構造糸を使用して、コンピュータジャカードシステムで地組織に朱子組織を用いた椿の花柄模様のカーテン地である(図12)。
     さらに、花柄地模様の外観に変化を持たすため、ベージュ色を基調にしたレース用カーテン柄をモデファイして捺染加工を施した。

    図12 ニュー梳毛ジャカードカーテン

    2.3.5 カーテン地「漣」
    たて糸にポリエステルブライト糸、よこ糸に同じくセミダル糸の異繊度交撚によるリング複合撚糸を使い、夕陽を浴びてキラキラと輝く、小さな波を表現した(図13)。これにより、繊細で微妙な凹凸を持つ優しい表面感の、落ち着いたカーテン生地となった。

    図13 カーテン地「漣」

    2.3.6 カーテン地「群泳」
    たて糸にポリエステルブライト糸を用い、よこ糸にはポリエステルセミダル糸の異繊度交撚によるリング複合撚糸と仮撚加工糸を交互に用いることにより、高級感のある光沢と独特の表面効果を持たせた(図14)。 清流で波紋を描きながら群れ遊ぶ力強い若鮎の姿をジャガード柄で織物表面に一層浮き立つ様に見せた、清涼感溢れる高級カーテン生地を製作した。

    図14 カーテン地「群泳」

    2.3.7 サニタリーシーツ
    たて糸にポリエステル8.3Tex(75D)/36fと5.6Tex(50D)/24fを合糸してS400T/mの撚糸を使用し、よこ糸に吸湿繊維の29.5Tex(20S)(ポリエステル50%、吸湿繊維50%)で湿気を吸収して発熱する機能を持つ繊維を使用した。
     たてよこ糸の浮き沈みによって、布面に蜂の巣のような凹凸を表した蜂巣組織として、体と布との間に空間を持たせると同時に、布は体内から出る汗を吸収して発熱し、暖かさを感ずる。さらに織物表面に暖かみのある色相のプリント加工を施して、幼児や高齢者用のシーツ生地とした(図15)。

    図15 サニタリーシーツ

     なお、市販の綿シーツ生地3点と快適性能に対する比較試験を行った。その結果を表2および表3に示す。
     20℃で湿度65%、90%時の吸湿率を見ると、市販綿シーツ生地に比べ、試作したサニタリーシーツは共に吸湿率の値が大きいことが分かった。さらに表4に示す布の発熱性試験においても、市販の綿シーツ生地に対し、発熱性のあることを確認できた。この結果から、当場で試作したサニタリーシーツは、用途としては特に寒い季節に使用すれば、従来の生地に比べ、温熱生理学的な快適感が得られるシーツ生地に仕上がったと考えられる。

    表2 試験布の糸使い
    試料素材
    たてよこ
    サニタリー シーツPE8.3Tex/36fPE吸湿繊維
    PE5.6Tex/24f29.5Tex(PE/吸
    Z400T/m湿繊維:50/50
    綿シーツ生地(A)綿 7.4Tex/2綿 7.4Tex
    綿シーツ生地(B) 綿 19.7Tex綿 16.4Tex
    綿シーツ生地(C)PE綿混紡PE綿混紡
    16.8Tex19.7Tex

    表3 市販綿シーツ生地との吸湿性比較
    20℃湿度(%) ( RH)試料吸湿率
    6590
    サニタリー シーツ8.810.0
    綿シーツ生地(A)8.009.2
    綿シーツ生地(B)7.08.2
    綿シーツ生地(C)3.64.2

    表4 布の発熱性
    試   料室内雰囲気22℃
    水温23℃
    サニタリー シーツ2℃上昇
    綿シーツ生地(A)変化なし
    綿シーツ生地(B)変化なし
    綿シーツ生地(C)変化なし

  1. 結言

     従来の衣料分野から、今後拡大が期待できる非衣料分野の室内インテリア製品などの製品開発を目的に、9点の試織を試みた。特に織りと建具との技術交流により製品開発した衝立(クロススクリーン、風炉先屏風)や、当場の伝統工芸研究室の協力によって、基本柄をCGにより展開して製作した織額パネル(あやめ、りんどう)は和室、洋室両用の室内インテリア製品となった。さらに新合繊梳毛調複合構造糸、ネップ糸のスパン調素材、および異繊度使いの複合撚糸等を使って、上品な表面効果を演出したカーテン地や幼児や高齢者用の快適シーツ地等、機能性の高い付加価値織物を開発した。これから得た技術を業界に対する技術相談や技術指導に反映させ、今後の新製品開発力支援の一助としたい。なお、試織品を毎年開催される全国繊維技術展(公設繊維関連試験研究機関の試作品)に出品(今年度は京都市勧業館)した。その結果、「クロススクリーン」と「サニタリーシーツ」が技術振興賞、「ファンシーストライプ」が工業技術院長賞をそれぞれ受賞した。

     
    参考文献

    1. 山中敬雄:「工業材料」(臨時増刊),p.90-96 (1994)
    2. 山崎義一:加工技術,Vol.30.No.11,p.24-28(1995)


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