インテリア織物の開発指導
繊維部 土定育英・中村清光・浜出三郎・中西源次・新谷隆二

 石川県の繊維業界は、東アジア諸国の追い上げや製品輸入の増大、円高の進行等により、極めて厳しい状況に直面している。このような環境変化に対し、21世紀に向けての中小企業は、製品の高品質化や高付加価値化を行い、製品開発力のある企画提案型企業へ進展しなければならない。
 これを支援するため、当場では、新合繊を主体とした交撚・交織技術により、新しいタッチの素材作りを進め、インテリア分野での用途開発を行い、クロススクリーン(衝立)や、カーテン生地等の製品作りを行った。
 これから得た撚糸技術、製織技術等を業界に対する技術相談や技術指導に反映させ、産地の活性化を図った。
キーワード:インテリア、織物、複合撚糸、交織

  1. 緒言

    石川県の繊維業界は、低迷する86年の円高定着以来、内需転換を図り厳しい経営環境に突入している。
     これには中国の買い控え、製品輸入の引き続く増加、販売価格の低迷、原料価格の高騰などの問題が産地を挟撃している。そのため21世紀に向けての中小企業は、製
    品の高品質化や高付加価値化を行い、製品開発力のある企画提案型企業へ進展しなければならない。
     特にこれまでにないものを求める消費者の個性化、多嗜好化から、他品種小ロットの生産が要求されてきている。これを支援するため、従来の衣料用途主体型から、今後拡大が期待できる非衣料分野での用途開発を目的に、新合繊1)を主体とした交撚・交織技術を駆使して、新しいタッチのインテリア製品の開発を行い、関連企業に対する技術指導の向上を目的としている。

  2. 内容

    2.1 国内のインテリア繊維製品の動向
    日本化学繊維協会調査資料2)による、平成6年度のインテリア用の品目別繊維消費量を図1に示す。これよりカーペットが55%で最も大きな需要分野であり、次に、カーテン、椅子張り地がそれぞれ18%、インテリア小物が6%、人工芝が3%、壁クロスが1%となっている。これを素材別(糸ベース)に見ると、図2に示すように、ポリエステル(フィラメントおよびスパン糸)が40%、アクリル21%、ナイロン(フィラメント糸が主体)13%、ポリプロピレン、レーヨン、羊毛、各4%、綿2%となっている。すなわち、ポリエステルが価格的・性能的優位性から圧倒的なシェアを有しており、この比率は年々高まってきている。

    図1 品目別繊維消費量
    図2 繊維別・インテリア用繊維消費量(糸ベース)

     なお、合成繊維が全体の約80%を占めており、インテリア市場は合成繊維の独占場といえる。なお平成8年度の非衣料分野の繊維需要では、機能性の付加や需要創造型繊維素材の開発によっては、さらに非衣料分野の需要拡大が期待されるとしている。 このように、衣料および非衣料ともポリエステル新合繊を主体とした商品企画が先行して、新しい表面変化を追求した素材のウエートが高まってきている。
     このことは複合する糸の種類が広がることで、異素材や異繊度糸の交撚、交織等によって、付加価値の高い新しい感覚の表面効果(風合いや外観に変化を出した)を演出する素材(複合化技術)が求められていることを意味する。

    2.2 試織織物の内容
     試織した織物の仕様を表1に示す。

    表1 試織した織物

    2.3 試織織物の特徴

    2.3.1 クロススクリーンおよび風炉先屏風
     県木であるアテ材を使った布貼りスクリーン(図3)と、高級で上品な趣のある風炉先屏風(図4)を製作した。これは当場が推進している異業種との技術交流によるものである。布はたて糸にポリエステル加工糸、よこ糸にレーヨンブライトを使った交織織物とし、朱子の表裏ストライプ柄とした。よこ糸には、高級感と気品を表すために、図5に示す先細雲型スラブを一定間隔ごとに連続して並ばせた綿意匠糸(スラブヤーン)をレピア織機で無作為に織り込んだ。このためにレピア織機のよこ糸ガイドの穴を大きくして、スラブが通り易いよう工夫して改造した(図6)。さらに黄金色に染色して織物の気品を高め、枠には、木業界では商品にならない と言われているアテ材の風倒木(天災や風水害等によって倒れ使用不可能と思われる木材)を利用して、和室、洋室両方に使えるクロススクリーンとお茶席用の風炉先屏風を製作した。

    図3 クロススクリーン
    図4 風炉先屏風
    図5 綿意匠糸(スラブヤーン)
    図6 レピア織機製織状況


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