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小松絹織物と加賀友禅技法を用いたおくるみの開発

■繊維生活部 ○杉浦由季恵 松山治彰 餘久保優子 守田啓輔

1.目 的
 安心して子育てのできる環境の整備や質の高い子ども用品が求められており,県内繊維業界においてもこの分野での製品開発が強く望まれている。また,祖父母から孫へ親から子へという高級子ども用品は,新しいギフト市場として期待されている。そこで本研究では,聞き取り調査の意見を基に,小松絹織物と加賀友禅技法を組み合わせた高級子ども用品の開発について検討した。

2.内 容
2.1開発の方向性
 開発にあたり,子ども用品売り場の状況調査と,キッズデザインの専門家や百貨店,専門店関係者への聞き取り調査を行い,開発領域と方向性の絞り込みを図1に示すようなイメージマップにまとめた。
 聞き取りや売り場の調査では,高級な乳幼児用品は,世界の一流ブランドが多く,和を感じる製品は,「一つ身」「四つ身」といったお宮参りや七五三などの行事に使用される伝統的な和装用品に留まっていた。
 このような事から,図1のイメージマップの絞り込みにより,下記の開発領域と方向性を設定した。
〔開発領域と方向性〕
・乳幼児と子育てのための安心で快適な繊維製品
・新しいギフト市場として,祖父母から孫へ,親から子へという高級ギフト市場
・和風でモダンな質の高い繊維製品

(図1 開発領域や方向性の絞り込みイメージマップ)

2.2織物素材と加飾技術の特徴
 県内の絹織物素材及び加飾技法の特徴について調査を行ったところ,小松地区の絹織物の風合いや織技術は,織組織が作り出す織物表面の変化による,ふんわりとしたやさしい肌ざわりが最大の特徴である。加賀友禅については,手描きや型染めによる,華やかで繊細な加飾技法が大きな特徴である。
 本研究では,肌にやさしくふんわりとした風合いの小松絹織物と,加賀友禅の華やかさと緻密な技法という,双方の特徴を生かした,和風でモダンな質の高い乳幼児と子育てのための開発を行うこととした。

2.3 デザイン提案
 開発領域の設定や織物素材と加飾技法の調査を基に,具体的に生活シーン別に子ども用の製品を拾いだし,その中から絹織物の風合いの良さと加賀友禅の加飾を効果的に表現できるものとして,開発テーマは「おくるみ」とした。そして図2のアイデアスケッチのデザイン提案を行った。

(図2「おくるみ」  アイデアスケッチ )

2.4 試作
 図2のデザイン提案を基に,小松絹織物を使用し,染加工は加賀友禅染色団地の10人の染職人の方々に協力を得て,それぞれの持ち味を生かした模様を施した10点の「おくるみ」を試作した。

2.5 改良に向けた聞き取り調査
 試作した「おくるみ」の評価と改良に向けた聞き取り調査を行った。県内の展示会(2回)や研究会(2回),研究発表会(4回)を通して子育て中の母親や孫を持つ祖父母,加賀友禅染色団地,小松繊維企業等へ「おくるみ」の開発概要の説明と紹介を行った。さらにキッズ用品を手がけるデザイナーの意見も得た。
 その結果,開発意図や表現技術,肌触りや風合いは大変好評を得た。また乳児への使用試験でも好評であった。改良に向けた意見としては,洗濯による縮みや色の変化など,取り扱いについて心配する意見があった。その他に,短い期間しか使用できないため「おくるみ」だけに止めず何か違うものにリメイクできないか,子どもの大切な思い出として記念に残しておきたい,石川の伝統を感じさせるために加賀友禅技法をふんだんに使った豪華なものも欲しいという意見もあった。

2.6 改良試作
 聞き取り調査の意見を基に,石川の伝統を感じさせるものや洗濯を考慮し,加飾したフード部分が取り外しできるもの2点(図3),リメイクが可能な「おくるみ」2点(図4)の改良試作を行った。さらに,洗濯に関しては,テストピースによる手洗いとドライクリーニングを行なった。織物の縮率は,手洗い3回で約98%,ドライクリーニング3回で約99%であり,色に関しては,視覚での変化はほとんど感じられなかった。

(図3 改良した「おくるみ」)
(図4 リメイクした 「ケープ」「ポンチョ」 )

3.結 果
 小松の絹織物と加賀友禅技法を組み合わせた「おくるみ」の試作,改良を行い,多くの知見が得られた。現在は,加賀友禅の染工場,小松の絹織物工場,呉服商,縫製の企業と,柄,織物,リメイク,バリエーション,パッケージ等の検討を行っており,製品化を進めている。
〔検討内容〕
・柄:母親が好むモダンで可愛い幾何柄の検討。
・織物:友禅技法が鮮明に表現できるサテン組織の絹織物を検討。
・リメイク:おくるみを七三五の時に羽織れる「ケープ」「ポンチョ」へリメイク可能なもの。
・アイテム:おくるみにコーデイネートしたファーストシューズやミトンの検討も行っている。
今年度は,工業試験場の技術移転フォローアップ推進指導で支援を実施している。