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耐摩耗性に優れた肉盛溶接材の開発

■特殊電極株式会社 研究開発部白山工場 友定勇男

■技術開発の背景
 私たち特殊電極株式会社は金属の『表面改質』分野で高度な技術を要する肉盛溶接技術と、それに用いる特殊溶接材料の販売を中心に事業を展開しております。当白山工場では、PTA(粉体プラズマ溶接)、HVOF(高速フレーム溶射)それぞれにロボットを組合せたシステムにより、お客様が求める表面改質の開発を実施しています。
 機械部品等の摩耗部位を復元すると同時に耐摩耗性を付与することができる再生肉盛材料を開発することは、昨今の省エネおよび省資源の観点から重要な課題となってきています。
 肉盛材料開発において耐摩耗性を向上させるには、材料成分およびミクロ組織を検討・調整し、硬さや靭性の向上を図りますが、硬さと耐摩耗性の向上に伴い肉盛部の品質保持(特に耐クラック性の低下)が問題となります。
 品質における耐クラック性の向上には靭性の付与が不可欠となり、互いに相反する性能である硬さと靭性を兼ね備えた成分組織を有するPTA肉盛用粉末材料を石川県工業試験場の技術支援を受けて、開発に取り組みました。

(図1 PTA工法によるロボット肉盛)

■技術開発の内容
 弊社粉末材料CAM-Alloy(クロム炭化物系サーメット合金)の成分組成と肉盛工法を見直すことで、耐摩耗性と耐クラック性の向上を図りました。
 最適成分、最適組織の抽出にあたり、摩耗試験や金属組織分析等各種評価による基礎試験を繰り返し、新粉末『AM-Alloy』を開発し『ゴム搬送用スクリュー』や『廃プラスチック粉砕用刃物』への適用を行いました。

(図2 ゴム搬送用スクリューへの応用)
(図3 廃プラスチック粉砕用刃物への応用)

■製品の特徴
 新開発材『AM-Alloy』を用いたPTA肉盛により、以下の特長を有する製品の製作が可能となりました。
・摩耗部品の再生と同時に長寿命化を図れます。
・交換周期の延長により大幅なコスト削減ができます。
・歪みが少なく安定した寸法を維持することができます。
・素材(被処理材)の調質硬さを維持したままの再生が可能です。

■今後の展開
 新開発材AM-Alloyの適用範囲を広げ、お客様のニーズにお応えします。併せて、新材料、新工法の開発にも取り組んでいますので遠慮なくご相談ください。