4.1 荷重を受ける機械部品の構造変更
4.1.1 概況
コンベア上の搬送物を押し出すための部品が繰り返し荷重を受け、短期間で疲労破壊する問題が生じた。破損は段付き部分を曲げ加工した箇所で発生しており、破損原因は応力集中により、き裂が進展したことによるものと推定された。部品は厚さ3.2mmのSPHC鋼板をプレス加工したもので、引張強さは294MPa{30kgf/mm2}である。
4.1.2 検討内容
まず、図8に示すような破損した形状の解析モデルを作成し、応力解析を行ったところ、破損した箇所と同じ位置に最大応力が発生することが確認された。最大応力値は246MPa{25kgf/mm2}で、使用部材の引張強さと比べて小さいが、プレスによる切断面は粗く、曲げ加工によるしわも発生するため、微細な切り欠きが生じやすく、その影響により応力値は高くなる可能性があり、構造上問題のあることがわかった。
応力集中を緩和するために、曲げ加工する位置と段付き部を分離し、段付き部のRや円孔の大きさを変えるなどの形状変更した解析モデル(図9)、元の形状の部品に補強板を付加した解析モデル(図10)を作成し、それぞれの応力解析を行った。
図8 破損品の解析モデル
図9 形状変更モデル
図10 補強板付加モデル
4.1.3 結果と考察
形状変更した場合には、図11に示すように最大応力は段付き部に生じたが、応力値は161MPa{16.4kgf/mm2}で元の形状に比べ約35%緩和された。また、補強板を付加した場合には、図12に示すように元の形状と同じ箇所に最大応力が生じたが、応力値は112MPa{11.4kgf/mm2}で約55%も緩和され、実用上問題がないことが確認された。
図11 形状変更モデルの応力分布
図12 補強板付加モデルの応力分布
4.2 鍛造品の構造変更
4.2.1 概況
S30C相当の鉄鋼材料を用いて試作した建設機械用鍛造品について、図13に示すような3点曲げの強度試験を実施したところ、塑性変形後の中央部のたわみ量が許容値(25mm)を超え、剛性不足となった。
4.2.2 検討内容
鍛造品の曲げ剛性を高めるための対策として、リブ高さを増加させることを提案し、図14に示すような左右対称な2分の1の形状でリブ高さの増加量Dt=0を解析モデルの初期形状として、さらにDt=1.5、3.0mmに変化させた解析モデルを作成した。なお、解析モデルは二次元であるが、要素ごとに部品の幅と同じ板厚を設定することで、剛性が等価であると仮定した。解析では、弾塑性解析により中央部のたわみを求め、その結果をもとに有効なリブ高さの推定を行った。
4.2.3 結果と考察
図15にリブ高さの増加量と中央部に生じるたわみ量との関係を示す。まず、実物を3点曲げ試験で測定した値と、これと同じ形状のDt=0の場合の解析値を比較すると、約1mmの相違がみられたが、定量的にほぼ一致する結果を得た。
解析結果では、リブ高さの増加量に伴い、中央部のたわみ量は直線的に減少する傾向がみられたことから、この直線の傾きを実物に適用できると仮定すれば、リブ高さの増加に伴う実物のたわみ量は図15の点線で与えられると考えられる。これにより、たわみ量を許容値(25mm)以下に押さえるためには、約2mmのリブ高さの増加が必要であることが推定できた。
有限要素法による構造解析システムを用いた産業機械の解析指導の傾向を調べ、その内容から得た解析上の留意点について検討し、以下の結果を得た。
参考文献