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 カバリング工程におけるカバリング糸の巻付け張力と
 カバード糸の構成比の関係
 繊維生活部 ○森大介

研究の背景
 カバード糸を用いた織物の風合いや品質を左右する要因として,カバード糸を構成する芯糸と巻付け糸の構成比があり,これはカバリング糸の巻付け張力の影響を受ける。そこで,カバード糸の構成比とカバリング糸の巻付け張力の関係を明らかにするため,バルーンの解析手法を用いて理論的にカバリング糸の巻付け張力を求めた。さらに,カバリング工程において糸層半径の変化に応じたスピンドル角速度を理論的に求め,カバリング糸の巻付け張力を一定とする手法は,カバード糸の構成比を安定させる効果があることを見出したので,その内容について報告する。

研究内容
 スピンドル角速度とカバード糸の構成比(L2/L1)の関係を図1に示す。図1より,撚数が同じでもスピンドル角速度の増加にともないカバード糸の構成比は減少し,それぞれの撚数の値に応じて一定の値に近づいている。また,その減少率は撚数が多いほど大きくなっているが,これは,スピンドル角速度の増加にともなって巻付け張力が大きくなり,カバリング糸が引っ張られた状態で芯糸に螺旋状に巻付くことが原因である。
 また,スピンドル角速度制御の有無によるL2/L1の違いを図2に示す。図2より,従来手法であるスピンドル角速度が一定の場合,糸層半径の減少にともない,L2/L1が増加している。これは,数値解析の結果より,カバリング糸の巻き付け張力が小さくなることが原因と考えられる。また,バルーンの数値解析結果を基に,巻付け張力が一定となるようスピンドル角速度を制御する手法を用いた場合は,従来手法と比較するとL2/L1が糸層半径の変化の影響をあまり受けていないことがわかる。この結果から,バルーンの解析より巻付け張力が一定となるようスピンドル角速度を制御する手法は,糸層半径の変化によるL2/L1が小さくなることを防ぐ効果があることがわかる。

(図1 カバード糸の構成比とスピンドル角速度の関係)

(図2 スピンドル角速度制御の効果)

研究成果
 糸層半径の変化にともなう巻付け張力の減少を防ぐため,バルーンの解析結果より求めた角速度でスピンドルを制御する手法は,カバード糸の構成比を安定化させるのに有効であった。

論文投稿
 日本繊維機械学会 Vol. 57, No. 3, 2004.




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