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全文（PDFファイル：65KB、1ページ） |
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ファントムモデルを用いたシールド衣料の電磁波低減効果のＦＤＴＤ解析
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| ■電子情報部 ○吉村慶之 ■金沢大学工学部 長野勇 八木谷聡 |
研究の背景
エレクトロニクス技術の発展にともない，電子機器から放射される不要電磁波による機器の誤動作等が問題となっている。この対策の一つにシールド材を用いた電磁波の遮蔽が挙げられ，効率よく遮蔽するには，数値解析によりその伝搬機構を理解しながらシールドの設計を行うことが望ましい。しかしながら，高導電性を有した薄板のシールド材を数値解析することは，セル数が膨大となるため困難である。そこで， 斜入射の透過係数をFDTD(時間領域差分)解析に導入する解析法を提案し，3次元のファントムモデルに薄板シールド材を被せた場合の電磁波シールド効果を数値解析した。
研究内容
電磁波が任意方向から多層材料に入射した場合の透過係数をFDTD解析のシールド境界に導入することによって，従来から困難とされてきた薄板シールド材の3次元的な電磁波透過問題に対する数値解析を可能とした。解析にあたり，心臓ペースメーカ装着者を模擬したファントムモデルを想定し，シールド衣料による電磁波のシールド効果を解析した。右図に送信アンテナとファントム表面との距離を変更した場合のシールド効果を示す。図中の@，Aは送信アンテナ位置の違いであり，@はファントム中心部，Aは肩下部である。この結果，本数値解析結果は実験結果とよく一致しており，提案した解析手法の有用性が検証できた。
次に，同図より，ファントム上部あるいは下部のシールド衣料の開口から入り込む回折波が，アンテナとの距離の増大とともに大きくなるため，距離を離すことによってシールド効果が低下していくことが観察できた。また，ファントムの内部媒質を空気にした場合，回折波の減衰が小さくなり，観測点における電界強度が強くなるため，シールド効果はファントムが生理食塩水の場合に比べて低下することが検証できた。
研究成果
Maxwellの電磁場論より，平面電磁波が任意方向から多層材料に入射した場合の透過係数を求め，この透過係数をFDTD法に導入することにより，従来から困難とされてきた薄板シールド材のシールド効果を数値計算することを可能とした。その結果，実験結果とよく一致しており，本手法の有用性が検証できた。
なお，本研究は，文部科学省の科学技術振興調整費による地域先導研究「地域産業の発展に寄与する電磁波技術に関する研究」の一環として行ったものある。
論文投稿
電気学会論文誌A 2003 Vol.123 No.7 P.623-629
