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 バインダレスcBN焼結体工具による生体用チタン合金の高速加工
 機械金属部 ○廣崎憲一
 金沢工業大学 新谷一博 加藤秀治 朝倉史 松尾和哉

研究の背景
 近年,生体への毒性を配慮してバナジウムフリーチタン合金が生体用インプラント材料として開発されている。この生体用材料を含めて,一般にチタン合金は切削加工において,切削温度が高く,激しい溶着を生じやすい材料として知られている。そのため,アルミニウムや一般構造用炭素鋼に比べ加工能率が著しく低く,その改善が課題とされている。そこで,本研究では新素材であるバインダレスcBN焼結体を生体用チタン合金の切削加工の工具材として適用することを提案し,その加工性能を評価した。


研究内容
 実験は,被削材に外科用インプラント材料として利用されているTi-6Al-2Nb-1Ta合金を供し,hBN粒子を高温高圧下で直接変換法により合成したバインダレスcBN工具を用いて旋削加工及びミーリング加工を行った。図1に示すように,切削速度4.2m/sの高速旋削条件において,バインダレスcBN工具は,超硬合金,cBN,多結晶ダイヤモンド工具に比べ非常に高い工具寿命を示した。工具切れ刃は,切削距離3300mにおいてもシャープエッジの状態を保持しており,すくい面摩耗の進行も他の工具材種に比べ抑えられた。また,バインダレスcBN材により丸駒チップを作製し,微小切り込み条件によるミーリング加工を行った。その結果,切削速度V3.0〜8.3m/sにおいて,バインダレスcBN工具は,切れ刃すくい面上にマイクロチッピングが観察されたが,図2に示すように超硬合金工具に比して逃げ面摩耗幅VBの進行が著しく抑えられ,高い耐摩耗性を示した。

(図1 工具材種別による工具寿命の比較)

(図2 ミーリング加工における工具摩耗曲線)

研究成果
 バインダレスcBN工具を用いてTi-6Al-2Nb-1Ta合金の高速旋削加工を行った結果,バインダレスcBN工具は,従来市販品工具の超硬合金,cBN,多結晶ダイヤモンド工具に比べ,耐摩耗性に優れていることが認められた。また,丸駒チップを用いた微小切り込み条件によるミーリング加工では,切削速度が8.3m/sの高速加工が実用的に可能であることがわかった。

論文投稿
 日本機械学会 International Journal Series C, Vol.47, No. 1, 2004. p.14-20.

本研究は日本自転車振興会補助事業にて導入した非接触3次元表面粗さ計を利用した。


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