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全文（PDFファイル：60KB、1ページ） |
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薄板電磁シールド材の電気定数推定
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| ■製品科学部 ○吉村慶之 中薮俊博 ■金沢大学工学部 長野勇 八木谷聡 |
研究の背景
不要電磁波の対策として，シールド材を用いた電磁波の遮蔽が挙げられる。効率よく遮蔽するには，数値解析によりその伝搬機構を理解しながらシールド材の設計を行うことが望ましい。数値解析や理論解析を行うに当たって材料の電気定数が必要となり，純金属などは便覧などに示されているが，電子機器の筐体やシールド衣料に使用されている材料のほとんどはこれらの定数が未知である。そこで，本研究では，薄板で柔軟性があり，かつ多層で構成された材料に対しても精度よく電気定数が測定できるシステム構築を行うこととした。
研究内容
従来，薄板で柔軟性があり，かつ多層で構成された材料に対しては，電気定数（比誘電率，比透磁率，導電率）の測定が困難とされている。そこで，磁気ダイポール波源近傍に設置された電磁波シールド材のシールド効果を測定し，その結果に理論解析結果をフィッティングさせることによって，逆問題として電気定数の推定を行うものである。具体的には，磁気ダイポール波源より放射される電磁波を円筒波の積分表示式で表現し，シールド材位置を境界として理論展開するものである。また，シールド効果測定のための評価器（シールドボックス）も測定誤差が少なくなるように，本理論解析により設計し，試作を行った。
薄板シールド材として3種類のサンプルを用いて電気定数の推定を行った。サンプルAは，シールド衣料として用いられるものでPET樹脂に銅ニッケルメッキされたもの，サンプルBは亜鉛メッキ鋼板，サンプルCは純アルミニウム材である。これらの材料のシールド効果を測定し，実測値に対して理論解析値が±1dB以内になるように電気定数を変更しながら反復計算しフィッティングさせる。その結果を図に示す。これより，表のような電気定数の推定結果となり，サンプルCは純アルミニウム材であるため，便覧に示されている電気定数と良く一致しており，本手法の妥当性が検証できた。
（図 実測値へのフィッティング）
（表 電気定数推定結果）
研究成果
開発した理論解析法によって設計し試作したシールドボックスを用いて，精度の高いシールド効果が測定でき，電磁波対策用材料の基礎的検討が可能となった。また，本試作器と理論解析により，薄板シールド材に対する電気定数を精度よく推定できるようになった。これらより，シールド材の開発や電気定数が未知である材料を理論計算に導入しその効果が確認できるため，電磁波対策の一助となるものと考えられる。
論文投稿
電気学会論文誌A. Vol.123, No.2, 2003, p.192-199.
