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 居住者の個人差を考慮したにおいの嗜好と順応分析
  上田芳弘* 加藤直孝* 大薮多可志** 木村春彦***
    *情報指導部 **金沢星稜大学 ***金沢大学

居住空間の快適性を向上するために,においセンサを用いてにおいを検知し,消臭やにおいの制御を行う研究が進められている。しかし,においセンサによりにおいの種類や濃度を検知できたとしても,においの嗜好は居住者ごとに大きく異なるので,様々なにおいの嗜好分析の手法が求められている。そこで,まず階層化意思決定法(AHP)を用いて計算できる重みを,においの好き嫌いの度合いを表す指標として使用できることを示す。更に,AHPの動的比較法を応用して,居住者の嗅覚順応過程を嗜好の変化として分析する手法を提案する。においの順応時間についても個人差が大きいため,提案手法は居住者ごとの嗜好や順応の特性を反映したにおいの制御システムに有効と考えられる。
キーワード:AHP,動的判断法,嗜好,順応,においセンサ

Analysis of Odor Preference and Adaptation Considering Characteristics of Individual Resident

Yoshihiro UEDA, Naotaka KATO, Takashi OYABU and Haruhiko KIMURA

It is expected that odor sensors can be applied to the deodorization or the modulation of odors to make comfortable living space. Even if odor sensors can detect kinds and concentrations of odors, the odor preferences are very different according to various characteristics of the residents. The analysis of the resident's preferences of various odors is needed for this application. Firstly, the Analytic Hierarchy Process (AHP) is applied to the preference analysis. It is shown that the weights calculated by the AHP can be considered as degrees of the resident's preferences or dislikes of odors. Furthermore, a model by using the dynamic judgments in the AHP is proposed to express the olfactory adaptation of the resident as changes of preferences. Because the residents have different adaptation-time respectively, the proposed model is expected to be effective in the field of system control for odors based on characteristics of individuals.
Keywords:AHP, dynamic judgment, preference, adaptation, odor sensor


1.緒  言
室内では居住者の活動などにより様々なにおいが発生している。居住空間の快適性を向上するためには,発生したにおいを検知し,悪臭や不快臭を消臭しなければならない。また,高ストレス社会の現代において,居住者の心身的なリラクゼーションを促進するために植物などの快適臭を用いたアロマセラピーが注目されている。このように居住空間におけるにおいの制御は今後,益々その重要性が高くなるものと考えられる。このため,においセンサによるにおいの検知について,これまでに様々な研究1)〜3)が行われている。
一方,においの嗜好は,人間の主観に多くを依存し,かつ地域差や環境差などの個人差が大きいといわれている4),5)。例えば,においを体験したときの心身の状態によって,同じにおいが,ある個人には良いにおいでも,別人には不快なにおいであったりする。居住空間の快適性を向上させるためには,発生したにおいとその濃度が,においセンサにより特定できたとしても,このように個人差が大きいにおいの嗜好を的確に把握できる手法が必要とされる。
そこで,本研究ではまず,階層化意思決定法AHP (Analytic Hierarchy Process)6),7)を用いて,においの嗜好分析を行う。AHPは,代替案や評価項目の相対的重要度を人間の主観的な評価から定量的に求める手法として知られている。AHPを用いることにより居住者ごとににおいの好き嫌いを主観的に判断することができ,においの好ましさあるいは嫌いさの度合いはAHPで求められる重みとして考えられる。
更に,AHPを用いることのもう1つのメリットとして,重みを時間軸上で変化させる動的判断法6)を応用することにより居住者ごとのにおいへの順応を表すことができるものと考えられる。そこで,本研究ではにおいの好き嫌いの度合いが時間経過とともに変化していくものとして,においへの順応特性を分析する方法を提案する8)。
最後に,嗅覚官能検査用の試薬T&Tオルファクトメータ9)を用いて,被験者のにおいの嗜好分析を行うとともに,順応時間を測定して提案手法の有効性を評価する10)。

2.提案手法
2.1 AHPの応用
AHPでは,評価項目や代替案の階層構造を作り,各階層で,2個ずつの項目の重要性や好ましさなどを表1に示したような一対比較により判断する。このとき各評価項目Ai(i=1〜n)の重みwiを要素とする重要度ベクトルwT =[w1 w2 w3・・・wn]は式(1)によって求められる。
A w = λmax w (1)

図1 一対比較行列の例

ここで,Aは一対比較値aijを要素とするn×nの一対比較行列で,aji=1/aij, aii=1(i,j=1〜n)と仮定され,Aは例えば図1に示すよう行列となる。更に,λmaxは式(1)を固有値・固有ベクトル問題として解いたときの最大固有値,wはλmaxに対応する最大固有ベクトルで与えられる。なお,一対比較値aijは人間の主観によって表1で決定されるので一対比較作業全体としての整合性が問題となる。一般にこの整合性の指標として整合度(Consistency Index)C.I. = (λmax - n)/(n - 1)が用いられる。このC.I.が0.1以下であれば,整合性が取れていて,式(1)の最大固有ベクトルwを重要度ベクトルの推定値とすることができるとされている。
表1 一対比較値
一対比較値aij AiはAjに比較して
135792,4,6,8 同じくらい重要やや重要かなり重要非常に重要極めて重要補間的に用いる

このようなAHPを用いて,においの好ましさや嫌いさの度合いを重みとして求める。更に一般にAHPでは,一対比較値aijは人間の主観によって内面的かつ静的に決定されるが,本研究では時間軸上での変化を与えるため,動的判断法6)を応用して時刻tの関数aij(t)とする。同様に,一対比較行列A,最大固有値λmaxと,これに対応する固有ベクトルwも時刻tの関数とし,固有値問題を式(2)で与えるものとする。
A(t) w(t) = λmax(t) w(t) (2)
上述のように固有値問題を時刻tの関数とすることで,嗅覚の順応特性を嗜好の時間変化として表すことができるものとした。以下,低濃度のにおいに対して,人間はにおいの発生時点では顕著な嗜好を示すが,時間経過とともに順応してにおいに反応しなくなることを表す順応モデルについて述べる。

 2.2 順応モデル
においi,jを時間tだけ嗅ぎ続けたときのにおいjに対するにおいiの嗜好比を一対比較値aij(t)と定義する。このaij(t)が時間とともに収束することを式(3)で表す。これまでに順応は,においの刺激時間に比例して進むことが知られており4),人間の感覚器官の特性は指数関数で近似されることが多いので,式(3)では順応を刺激時間に関する指数関数とした。

(aij(0) - 1)e-ηt + 1 ( if aij(0)≧1)
aij(t)= (3)
1/aji ( if aij(0)<1)
ここで,aij(0)は居住者が決める一対比較値の初期値であり,ηは順応率を表す。すなわち,aij(t)はt=0で個人のにおいの嗜好を表す値を取る。その後,徐々に1に収束することでにおいに順応し,ついには反応しなくなることを表している。この式(3)は,居住空間のにおい濃度が低く,かつほぼ一定で安定な状態のとき適用可能と考える。なお,順応率ηはにおいの種類によって変化することも考えられるが,本研究では個人の順応特性によって決まるものと仮定する。また,においの濃度が居住空間における通常濃度に比較して,かなり高い場合や居住者がどうしても受け入れられないほど嫌いなにおいを持つ場合が考えられる。このようなときは,それらのにおいに完全には順応しないものと考え,特定のaij(0)は,上記のようには収束せず,初期値を保つ,あるいは1より大きな値に収束させることもできる。

図2 重みの変化例

表2 T&Tオルファクトメータとにおいの印象

基準臭 濃度(w/w) 印象語
A 10-5〜10-3 バラの花びら
B 10-5.5〜10-3.5 カラメル
C 10-6〜10-4 靴下
D 10-5.5〜10-3.5 モモの缶詰
E 10-6〜10-4 カビ

式(3)によって一対比較値aij(t)を時間経過とともに変化させたとき,一定時間ごとに式(2)を繰り返して解くことによって求められる重みは,図2に示したように順応によってwi(t)は初期値wi(0)から1/n(図2の例では1/n=1/4)に収束する。また,式(3)で順応率ηを大きくすると,wi(t)は1/nに速く収束する。すなわち,ηが大きいときは順応が速いことを表し,逆にηが小さいときは順応が遅いことを表している。実際の応用では個々の居住者の順応率ηは測定困難なため,嗅覚能によって3.2で述べるような方法でηを数段階に分け,居住者自身がこの数段階の環境を経験し,自らの嗜好や順応特性に適合した順応率を選択することが有効である。
更に,においの重みwi(t)が収束することは,においに順応したことを表していると考えられるので,発生したにおいの重みの変化によって順応時間を推定できると考える。つまり,発生したにおいのwi(t)が十分に収束したとき,すなわちwi(t)の微係数wi(t)'が0になった時間を順応の推定時間とすることができる。

3.評価実験
2.で提案した方法によって居住者のにおいの嗜好を分析すること,並びににおいへの順応時間を推定することが可能になった。そこで,嗅覚官能検査用の試薬T&Tオルファクトメータ9)を用いて提案方法の有効性の評価を行った。まず,AHPで居住者のにおいの嗜好を分析するために,実際のにおいを嗅ぐことなく,においの印象語だけで嗜好を分析できるかを検討した。この実験は,実際の応用で居住者に多くのにおいを嗅いでもらい,においの嗜好を分析することは困難であると思われ,居住者のにおいに対する記憶4)により嗜好を分析できるかを検討するために行った。なおこれまでに,においの記憶による嗜好分析についての報告はなされていない。次に,被験者のにおいの認知能と順応時間を測定し,式(3)の順応率ηを分析した。更に,このηを用いて式(3)によって順応時間を推定し,実際に測定した順応時間と比較することで評価を行った。

3.1 においの嗜好分析
T&TオルファクトメータにはA,B,C,D,Eの5種類のにおいがあり,高濃度の試薬から10倍等を単位に希釈し,8段階,あるいは5段階の濃度の試薬が用意されている。これらの試薬を基準臭AからEの順に,それぞれの基準臭では低濃度のものから順に,無臭濾紙の先端に付け,被験者に手渡す。そして,被験者にそのにおいを嗅いでもらい,「何かにおいを感じる」濃度,すなわち検知閾値と「何のにおいか,あるいはどんなにおいかが分かる」濃度,すなわち認知閾値を求める9)。本研究では,表2に示したような5種類の基準臭,各5段階濃度のT&Tオルファクトメータを用いた。なお,本実験では被験者の判断の整合性もその都度チェックして,矛盾がないようにした。
まず,20歳から60歳まで男女53名の被験者に表2の基準臭AからEのにおいの印象を表す印象語のみを提示して,一対比較することによってAHPで各被験者について,においの嫌いさの度合いを表す重みを推定した。その結果,図3に示したように,基準臭C,Eについて嫌いさの度合いが大きく,A,B,Dについては小さいことが分かった。また,特にC,Eについては,重みの分散が大きく,嗜好の個人差を確認できた。なお,図3における誤差棒は標準偏差を表している。

図3 基準臭の嫌いさの度合いを表す重み


図4 順応時間の頻度分布

表3 嗅覚能のクラスタと平均順応率
クラスタ 平均順応時間(sec) aij(0)平均値 平  均順応率η 平均認知閾値(w/w)
第1 89.9 3.65 0.0365 2.54×10-5
第2 48.2 4.52 0.0739 3.44×10-5
第3 12.5 4.56 0.286 3.66×10-5

次に,同じ53名の被験者に,実際にT&Tオルファクトメータの基準臭AからEを嗅いでもらい,被験者の認知閾値を求め,その後,嗅いだにおいの嫌いさの度合いを分析した。その結果,被験者ごとに様々な言葉でにおいを表現したにも関わらず,図3に示したように印象語で判断したときと同様に,嫌いさの度合いは基準臭C,Eが大きく,A,B,Dが小さいという傾向が得られた。なおこの実験は,被験者が先入観を持たないように,においの印象語による実験から1カ月経過した後に実施し,どのようなにおいであるかは誘導せずに,被験者が感じたままの印象で一対比較を行ってもらった。ここで,基準臭Eにおいては,実際ににおいを嗅いだときの方が,嫌いさの度合いが低くなっている。これは,Eの物質であるスカトールは,一般には悪臭とされるが,低濃度では香料の成分として使用されることがあり,芳香性を示すためと考えられる。更に,においの印象語で求めた重要度ベクトルと実際ににおいを嗅いで求めた重要度ベクトルとの相関分析を行った結果,その相関係数は0.76で,有意水準1%未満で正の相関が認められた。すなわち,本研究で用いたT&Tオルファクトメータのにおいについては,においの嗜好を分析するためには,AHPを用いて実際のにおいを嗅ぐことなく,においの記憶により印象語だけで嗜好を分析できるといえる。ただし,濃度に依存してにおいの印象が変化する物質については,その変化に対応した印象語をあらかじめ分析して用意する必要がある。例えば,本実験では基準臭Eのスカトールが低濃度のとき,その印象を表2の印象以外に「線香」や「樟脳(ショウノウ)」と表現した被験者が多く見られた。このような濃度別の印象語を用いれば,実際ににおいを嗅いだときと更に相関の高い分析が可能と考えられる。また,一般に日常生活で嗅いだ経験のあるにおいについても,AHPを用いて同様に,においの記憶により嗜好を分析できるものと考える。

3.2 においの順応分析
式(3)で用いた順応率ηを分析するために,ここではまず3.1と同様にT&Tオルファクトメータを用いて,被験者45名のにおいの順応時間を測定した。基準臭を低濃度のものから順に濾紙に塗布して被験者に嗅いでもらい,認知閾値,すなわち被験者ごとににおいを認知できる最低の濃度を測定した。更に,各被験者にその認知閾値の試薬を塗布した濾紙を嗅ぎ続けてもらい,嗅ぎ始めから「においがしなくなった」時間を測定し,この時間を順応時間とした。なお,被験者ごとに5回の測定を行い,その平均値を測定値とした。
その結果,図4に示したように,その頻度分布を見ると,順応時間には10倍以上の個人差が認められた。また,この頻度分布から被験者を3つのクラスタに分類できると思われる。すなわち,嗅覚能が鋭敏で順応が遅いクラスタと中程度のクラスタ,並びに嗅覚能が減退し順応が速いクラスタに分類できる。そこで,クラスタリングの手法であるLBG11)を用いて,クラスタ分類を行い,各クラスタ内での平均順応時間を求めた。この3つのクラスタの平均順応時間と式(3)から各クラスタの平均順応率ηを表3のように推定できた。なお,ここではあらかじめ被験者に,においの印象語を提示して求めたaij(0)のクラスタごとの平均値を表3のように求めた。次に,式(3)において,この平均値をaij(0)として,各クラスタの平均順応時間をtとして,更にaij(t)=1.1となったとき,十分に1に収束したものとしてηを算出した。
また,表3に示したようにクラスタごとの平均認知閾値が大きくなるほど順応時間は小さくなることが分かり,順応は嗅覚能の減退とともに速くなることが確かめられた。しかし,クラスタ間の平均認知閾値の差は,順応時間の差に比較すると小さなものであり,また各クラスタ内での被験者の認知閾値の分布には,明確な違いは認められなかった。これは,嗅覚能の減退は60歳ごろから始まり70歳を過ぎると更に悪化する4)ことが知られているが,本実験の被験者はこの年齢以下であり,嗅覚能が大きく減退している被験者が少なかったためと考えられる。

図5 順応時間の実測値と推定値の比較

図6 平均時間と推定時間からの分散
提案した式(3)の妥当性については,更なる理論的な検討と実験的な評価を行う必要がある。理論的な妥当性については,順応のメカニズムの詳細が解明されていない現状,明確にすることは難しいと思われる。そこで本研究では,実験的な評価を重視して,提案方法によって推定した順応時間と測定した順応時間を比較検討して,提案方法が実際の被験者の順応特性と適合するかを評価した。このために,まず被験者20名に,においの印象語を提示し,一対比較することによってAHPでにおいの嫌いさの度合いを求め,これをもとに式(3)により各被験者の各時刻における一対比較行列A(t)を求めた。更に,一定時間ごとにこのA(t)で式(2)を繰り返して解いて,各被験者の重みwi(t)を求めた。最後にwi(t)が収束性した時刻を各被験者の順応時間として推定した。また,前記と同様の方法で各被験者の認知閾値での順応時間を測定した。なお,順応時間の推定には,測定した順応時間に従って被験者を表3に示した3種類のクラスタに分類し,それぞれのクラスタでの平均順応率ηを用いた。実際の応用では2.2で述べたように居住者の順応時間を個々に測定する必要はなく,居住者自身が3種類の順応率での居住環境を経験することにより,自らの嗜好や順応特性に適合した順応率を選択できるものと考える。
図5に20名の被験者の測定した順応時間,および提案方法で推定した順応時間を示す。また,図6に示したように全被験者の測定した順応時間について,その平均値からの分散と,提案方法で推定した時間からの分散を比較すると,提案方法で推定した時間からの分散の方が,有意水準5%未満で小さくなっていることが分かった。よって,順応時間を提案方法によって推定できたといえる。
以上の評価実験により,居住者のにおいの記憶にもとづいて,AHPを用いて印象語によってにおいの嗜好が分析でき,かつ,提案方法によって居住者のにおいの順応時間を推定できたといえ,提案手法の有効性を示すことができた。

4.結  言
においセンサにより室内で発生したにおいを検知し,消臭やにおいの制御を行うことで居住空間の快適性を向上させることが期待されている。そのためには,個人差の大きいにおいの嗜好と順応時間を的確に把握できる手法が必要とされる。そこで,まず階層化意思決定法(AHP)を応用し,居住者の主観的な判断によって,においの嗜好分析を行うことを提案した。更に,AHPの動的判断法を応用し,においの嗜好の動的変化によって順応を表すことを提案した。これにより,居住者ごとのにおいの嗜好と順応時間を推定できるようになった。更に,T&Tオルファクトメータを用いて,実際に被験者ににおいを嗅いでもらい,評価実験を行い,以下の結果を得た。
(1) においの記憶にもとづき,実際ににおいを嗅がなくてもAHPを用いることで印象語によりにおいの嗜好を分析できることが分かった。
(2) 提案方法により推定したにおいの順応時間は,実際に被験者ににおいを嗅いでもらって測定した時間と適合した。
以上によって推定できるにおいの好き嫌いの度合いと順応時間を用いることにより個々の居住者の特性に適合したにおいの制御が可能になるものと考えられる。すなわち,提案方法は居住者ごとに異なる不快臭や快適臭を集中的に消臭あるいは発生させたりすることに有効である。更に居住者が室内のにおいに順応しているため,訪問者に不快感を与えてしまう問題に対して,提案方法は居住者の順応に合わせてにおいの制御ができるので有効と考えられる。
今後の課題としては,実際の居住空間で発生するにおいでの評価実験を行うことと,複数の同居者の嗜好に適合させるために集団的AHPの応用を検討することが必要である。

謝  辞
本研究を遂行するに当たり,被験者として評価実験にご協力頂いた石川県工業試験場,(財)石川県産業創出支援機構並びに金沢大学工学部木村研究室の皆様に感謝します。

参考文献
1) 南戸秀仁: エレクトロニックノース(人工電子鼻)−水晶振動子を用いた「におい」センサ, ニューセラミックス, No.12, p.47-52, (1997)
2) 近藤浩一,山本創,森田崇,堂上長則,南戸秀仁,筒口善央: 合成樹脂を塗布した水晶振動式ニオイセンサによる酒の種類判別, 電気学会論文誌E, Vol.117, No.9, p.443-448, (1997)
3) 相島轍郎: ケモメトリックス−香りのセンシングを中心にして−, T.IEE Japan, 177-E, (1997)
4) 元木澤文昭: においの科学, 理工学社, (1998)
5) 斉藤幸子,綾部早穂,小早川達,藤本雅子: ニオイの快不快の形成:幼児におけるニオイの快不快と弁別, 日本味と匂学会誌, Vol.3, No.3, p.656-658, (1996)
6) T.L.Saaty: Analytic Hierarchy Process, McGraw Hill, (1980)
7) 刀根薫,真鍋龍太郎: AHP事例集, 日科技連出版社, (1990)
8) Y.Ueda,N.kato,H.Kimura,S.Furukawa and T.Oyabu: Applying AHP to Preference Analysis by Dynamic Judgment - A Study of Adaptation and Identification of Odor, J. Advanced Computational Intelligence, Vol.5, No.4, p.213-219 (2001)
9) 栗岡豊,外池光雄: 匂いの応用工学, 朝倉書店社, (1994)
10)上田芳弘,加藤直孝,木村春彦,大薮多可志: 居住者の個人差を考慮したにおいの嗜好と順応分析, 電気学会論文誌C, Vol.122, No.8, p.1374-1380 (2002)
11)上坂吉則,尾関和彦: パターン認識と学習のアルゴリズム, 文一総合出版 (1990)



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