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 電磁波シールド材料の開発
  山名一男* 北川賀津一* 吉村慶之** 豊田丈紫*
   *化学食品部 **機械電子部

研究の背景


図 炭素繊維織物のシールド性能
(上 電界波,下 磁界波)
電磁波に関する話題が世の中の関心を集めるようになってきたが,その背景として,(1)携帯電話の普及による医療機器等の誤動作の発生,(2)ヨーロッパにおける電磁波規制の強化,(3)昨今の健康志向から電磁波や磁界の人体への影響に対する懸念,などが挙げられる。このような電磁波に絡んだ諸問題が生じている原因は,高度なエレクトロニクス技術の急速な普及がある。我々は便利で快適な生活を送っていくためにはエレクトロニクス応用機器や無線通信装置は必要不可欠であり,これらの機器をうまく使いながら,身の回りの電磁波(又は電波)と上手に付き合っていく必要がある。

研究内容
本研究では、電磁波を産業機械や建物から出さない,また逆に入れないための対策として炭素繊維織物による電磁波シールド技術を取り扱った。炭素繊維はPAN系,PIT系等というように出発原料の違いがあり,また,機械的性質からも分類されている。種々の性質を持つ炭素繊維素材とその織り方に対して電磁波シールド効果を評価した。PAN3K, PAN6K, PAN12K, PIT系の4種類を用いて炭素繊維織物を試作し,アドバンテスト法で評価した。1MHzから300MHzの電界波の測定範囲において,40dB以上のシールド効果が得られた。最大値は30〜100MHzで最も大きな値,50〜60dBの減衰を示した。織物素材の間では大きな違いを見出せないが,PAN12Kが最もシールド性能に優れていた。磁界波については,10MHzから徐々に上昇し,300〜700MHzでは最大で35〜40dBを示した。電界波と同様に織物素材の間には大きな違いを見出せないが,PAN12Kが最もシールド性能に優れていた。これらの電界波及び磁界波とともにシールド効果は炭素繊維織物の導電性に強く影響を受けていると推定される。

研究成果
炭素繊維織物を試作し,電磁波シールド機能を評価した結果,以下のことが明らかになった。
(1)PAN3K,PAN6K,PAN12K,ピッチ系の4種類の炭素繊維を用い,織物を試作し,アドバンテスト法により評価した結果,PAN12Kがシールド性能に優れていた。(2)炭素繊維織物とステンレス網,真鍮網,銅網との比較を行った結果,炭素繊維織物は上記の金属網と同等もしくはそれ以上のシールド性能を有していた。(3)織物の重ね合わせによるシールド性能を評価したところ,厚みが増すと,わずかながらシールド性能が増加した。

論文投稿
Proceedings of The 17th International Korea-Japan Seminar on Ceramics, 2000 p.222-226



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