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 エアジェットルームの変形おさから漏れる空気流れ
  新谷隆二* 新宅救徳** 岡島厚**
    *繊維部 **金沢大学工学部

研究の背景
 変形おさ補助ノズル方式がエアジェットルームの高速化および広幅化に有利であるため,よこ糸搬送方法の主流となっている。この方式のよこ糸挿入時における糸の飛走状態には,メインノズルと補助ノズルからの噴流はもとより,変形おさにおける空気流れが密接に関係している。また,織物規格によっておさ密度が変更されることから,おさ密度とおさ背面への空気流れの関係を知ることは重要である。

研究内容

図 補助ノズル噴流の拡散方向
変形おさ背面における空気流の基礎的な現象を明らかにするために,市販されている12種類の変形おさ単体を用いて,補助ノズル噴流の変形おさ背面への空気流れの可視化と3種類の変形おさ背面での速度分布の測定を行い,変形おさの密度とおさ背面への空気流れとの関係について調べた。
補助ノズル噴流の変形おさ背面への流れの可視化には,シュリーレン測定装置と炭酸ガスを用いた。図に示すように,補助ノズルからの炭酸ガスの流れは,おさ背面では図の@とAの方向であることが明らかになった。また,おさ背面への漏れだけではなく,おさ前面上部や下部においても,おさ密度によって流れの様相が異なる。おさ前面上部では,おさ密度が大きいときには,図のBの方向への流れが観察され,おさ密度が小さくなるにしたがい,Cの方向への流れが観察されるようになった。また,おさと補助ノズルの間における流れの循環も観察された。
変形おさ背面での速度分布の測定には,熱線流速計を用いた。時間平均速度分布の等高線図から,おさ背面への漏れは,補助ノズルからの距離40mmと60mmの2箇所に極が存在していることが明らかとなった。この2箇所からの漏れは,シュリーレン画像との比較から,それぞれ図のAの方向と図の@の方向に対応していると考えられる。

研究成果
 エアジェットルームの変形おさ背面における空気流の基礎的な現象を解明するために,変形おさ背面への空気漏れの可視化および速度分布測定を行い,次のことが明らかになった。
(1)おさ密度の違いによるおさ背面への漏れの違いがシュリーレン画像から明確になった。
(2)おさ背面では2箇所の漏れ中心が存在し,補助ノズルの近くにある漏れ中心は,おさ空間率の増加とともに溝から離れる傾向にある。
(3)エアジェットルームの省エネルギー化には,変形おさ背面から漏れる位置および漏れ方向を検討する必要がある。

論文投稿
 日本繊維機械学会 2000 Vol.53 No.10 T217-T224



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