技術ふれあい '99 新製品開発事例発表要旨
鉱山排水から発生する中和澱物の環境浄化への応用
ハットリ株式会社 服部事業所
副所長兼採鉱部長 加藤 恵


技術開発の背景
 ここに紹介する中和澱物とは服部鉱山の採掘現場の坑内より排出される酸性の鉱廃水を中和処理する際に発生するケーキである。この鉱廃水は硫酸鉄を溶解しており、消石灰で中和処理した沈澱物は、現在脱水ケーキとして露天採掘跡に埋めたてる他、坑内の地下空洞跡ヘスラリーとして充填処理しています。
 中和澱物は産業廃棄物の対象となっていますが、有害重金属は含まれておらず、今後も排水量の多少に拘らず発生することから、その有効利用が大きな課題となっていました。そこで、2〜3年前から無害な中和澱物の再資源化を図るため、利用方法について種々検討してきました。その結果、資源の有効利用と環境保全の一助に繋がっていく諸特性を有することに着目し、脱リン材料として商品化へ努力しているところであります。

技術開発の内容
 中和澱物のプレスケーキの天日乾燥物は、赤褐色を呈した板状土です。当初の発想では、砥の粉、園芸用土及び育苗用土等への利用であったが、いずれも良い結果が得られなかった。特にビタミン菜の生育実験では、澱物ケーキ混入用土を用いたプランターの生育が劣勢であった。その原因として、中和澱物が肥料の吸収を阻害しているのではないかと判断し、この施肥効果が現れない原因を究明する為、澱物ケーキの肥料に与える影響について検討した。その結果、中和澱物が肥料三要素中のリンを最も強く固定していることが判明しました。そこで現在、問題になっている水質の富栄養化に着目して発想を転換し、脱リン材料としての方向を定めるに至りました。プレスケーキを加熱乾燥し、破砕選別粒度調整することで環境浄化向け素材の試作を行っております。

製品の特徴
イ)赤褐色の多孔質物質で、リン酸(オルト、メタ、ピロ等)を選択的に固定化する。
口)大腸菌や一般細菌に対しては除菌もしくは増殖抑制効果を発揮する。
ハ)環境庁告示第13号に基づく溶出試験結果は、関係項目の環境基準をクリアーする。
二)新規化学物質、特定化学物質には該当せず、既存化学物質の集合体である。
ホ)リンを固定化した使用済の中和澱物は園芸、農業方面への再利用が可能である。

今後の展開
 中和澱物を用途方面から考えると、水質関係では1)下水処理場等の脱リン、2)花器水の腐敗防止、3)循環式回廊水園等のプランクトン及び藻類発生防止、4)観賞魚類のカビ類による病気予防及ぴ治療等が挙げられます。一方、土壌関係では1)観賞庭園等露地部への敷設による雑草発生抑止、2)農耕地より流出する余剰リン、窒素等の河川への流入防止(河川の富栄養化防止)等が挙げられます。従って今後、関連業界へのPRを積極的に行い、市場性が見込まれる時点で商品化に着手したいと考えております。

代表者名:代表取締役 谷波正三
住所:〒920-0853金沢市本町2丁目15-1ポルテ金沢ビル11階
TEL 076-262-5421 FAX 076-233-1349


* トップページ
* '99要旨集