技術ふれあい '99 新製品開発事例発表要旨
イオン注入によるDLC膜の厚膜化に関する研究
株式会社 オンワード技研
主任研究員 長谷川 祐史


技術開発の背景
 従来のイオンプレーティング法でDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜のコーティングを行っているが、成膜時の膜応力が大きいため、最大で 2μm程度の厚さまでしか得られないのが現状である。イオン注入技術を用いて基板と膜との界面をミキシングにより密着性を向上させた後、プラズマ-CVD技術により膜を堆積させて、従来よりも厚い DLC膜のコーティング技術を確立するとともに、イオン注入技術とプラズマ-CVD技術との複合化、さらに新たなプラズマ発生技術を導入し、DLC膜の高機能化、高品質化を目指す。

技術開発の内容
 成膜過程を二段階に分けて検討した。まず、加速電圧20kV程度に加速した炭化水素系ガスイオンを基板に照射し、基板表面を母材と成膜物質とのミキシング層に改質することにより、応力を傾斜的に高める。次に、高周波(容量結合バイアス基板印加)プラズマによりDLC膜の堆積を行う。成膜圧力、投入電力、基板温度等のパラメタを変化させることにより、組成、構造等を制御する。
 また、新たなプラズマ発生源として、イオン注入ガンの引出し電極を反転させて、低エネルギー電子ビーム源として使用可能な様に改造した。これにより高線量電子ビームがガス分子と衝突しプラズマを発生させるため、より低圧(10−4 Torr台)でも高密度プラズマを得ること期待される。

製品の特徴
 界面ミキシング効果により薄膜の密着性が向上するため、DLC膜の厚膜化が可能になり、厚膜化による磨耗寿命が長期化し、生産効率の向上が期待される。また、界面ミキシング後の成膜過程では、高周波プラズマの制御により成膜パラメタの設定を広く採ることが出来るため、用途に応じた膜質を得ることが期待される。

今後の展開
 本研究で使用する実験装置で膜質の再現性を調べ、結果を踏まえて実機の製作を検討する。

代表者名:代表取締役 川畠清高
住所:〒929-0111 能美郡根上町吉原町ワー13
TEL 0761-55-0466 FAX 0761-55-4405


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