技術ふれあい '99発表会要旨集
人造大理石の表面性状評価と高機能化 |
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化学食品部 ○笠森正人 製品科学部 安井治之 粟津 薫 |
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1.目的
人造大理石はその高級感のために浴槽,洗面台,キッチンおよび店舗のカウンターなどに広く使用されているが,さらにその使用範囲を広げるには,過酷な使用条件にも耐えられる必要がある。そこで,本研究では人造大理石の表面層に着目し,その表面の硬度や耐熱性向上について検討するとともに,評価法についても検討を行った。
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図1 添加材による人造大理石の光沢(60゚)の変化 |
2.内容
2.1 実験方法
試料には,表面層のゲルコートのみとゲルコート(厚さ0.4mm)の後に人造大理石を注入したものの2種類を用いた。ゲルコートにはガラスビーズやガラスフレークなどを添加し性状を変化させた。表面性状の評価は光沢,色,硬さ(4種類),摩擦および耐熱性について行った。なお,耐熱性は火の付いたタバコを試料の上に置いて表面変化を調べた。
2.2 光沢および色
光沢の変化を図1に示す。上図はガラスビーズの添加率による変化を,下図は添加量を5wt%一定とした場合の各種添加材の影響を示している。ゲルコートのみにガラスビーズを添加すると,添加量が増えるに従って光沢は低下するが,人造大理石にすると添加量10wt%までは,光沢の変化は小さいが上昇し,添加材を変えても光沢は上昇する傾向が見られる。マイカパールを添加すると,光沢は入射角度60゜では測定できないほど上昇した。
色の変化については,添加材を入れていないゲルコートを基準として色差を計算した。ゲルコートのみにガラスビーズを添加すると,色差は添加量に従って大きくなるが,人造大理石にすると変化は小さく,色の変化としては余り目立たなくなった。そのため蛍光顔料を添加しても変化は小さく,表面のゲルコート層のみへの添加では蛍光性はほとんど確認できなかった。蛍光性を持たすには,ゲルコート層よりも人造大理石層に添加する必要がある。
2.3 硬さ
FRPの硬さ試験で一般に用いられているバーコル硬さの結果を図2に示す。ゲルコートのみではガラスビーズの添加量が増えるに従ってバーコル硬さは上昇し,人造大理石でも添加材により硬さは上昇する傾向が見られる。
鉛筆引っ掻き硬さは,添加材によりゲルコートの硬さの向上が見られたが,人造大理石にすると硬さはほとんど向上しなかった。これは表面をゲルコート樹脂が覆っており,その表面に傷が付くためと考えられる。表面の耐擦過性を向上させるには樹脂そのものの硬さを上げる必要がある。マイクロビッカース硬さはガラスビーズを添加すると硬さは向上するが,他の添加材では効果は出なかった。
ダイヤモンドチップによるスクラッチ試験では,各種添加材を入れた人造大理石はいずれも加重に対する抵抗力の変化の傾向は全体を通じてほとんど等しかった。最も変化が大きかったガラスフレークによる結果を図3に示す。ガラスフレークの粒径の拡大に従い抵抗力の振幅は大きくなり,AEの強度も大きくなっている。
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図3 ガラスフレーク添加材のスクラッチ試験 |
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図2 添加材による人造大理石のバーコル硬さの変化 |
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2.4 摩擦
直径6mmの鋼球(SUS440C)とナイロン球を用いて摩擦試験を行った。鋼,ナイロンとも初期には動的摩擦係数の振幅が大きく,加重が増加するに連れて摩擦係数は小さくなる傾向にある。ガラスフレーク(大)を添加した結果を図4に示すが,鋼はナイロンに比べて動的摩擦係数の変化が大きく,その平均値も大きい。この傾向はいずれの人造大理石においても同様であった。今回は2種類の球で試験を行ったが,球の種類を増やせば製品評価に必要な表面性状の評価が可能となる。
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図4 ガラスフレーク(大)添加材の動的摩擦係数 |
2.5 耐熱性
着火したタバコを人造大理石の上に65秒間放置し耐熱性を調べた。ゲルコートのみではタバコ火による黄変は目立つものの,添加材を入れたものはマイカパールを除いて目立たなくなっている。マイカパールは光沢が高くより一層黄変が目立った。一方,最も粒径が小さいガラスビーズを添加したものはほとんど黄変せず,耐熱性を向上させることが分かった。これは,細かいガラスビーズにより表面の樹脂が相対的に少なくなったためと思われる。
3.結果
ガラスビーズやガラスフレークの添加により人造大理石の光沢は上昇し,バーコル硬さは向上するが,鉛筆引っ掻き硬さは向上しなかった。タバコによる耐熱性試験では,微小のガラスビーズの添加は耐熱性向上に効果があることが,明らかになった。