技術ふれあい '99発表会要旨集
中能登地域織物業活性化指導 |
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1.目的
中能登地域(1市15町)の織物業は,素材的にはポリエステル長繊維,用途的には衣料用が大半を占めており,広幅織物の産地を形成している。近年のアジア諸国製品の品質向上により,従来からの生産品では競争力を失ってきている。
この地域の織物業が活性化するには,企業が持つ製織技術力を高めるとともに,多様なニーズに対応できる企画力と商品開発力を身に付ける必要がある。そこで,中能登地域織物業に対して「商品の企画開発」と「製品の品質評価」を支援することにより,新製品を開発し,提案できる企業群の育成を図ることを目的としている。
今回,商品の企画開発支援のため,ドビー付織機で織物を製造するときの設計図となる織方図を作成するパソコン用ソフトウェアの開発と電子ジャカードシステムを用いた壁装材の試作および織物組織サンプル帳の製作を行った結果を報告する。
2.内容
2.1 織方図作成ソフトウェアの開発
近年のパソコンの進歩はめざましいものがあり,安価で性能の良いパソコンが中小企業においても導入されている。そこで,最近のパソコンのオペレーティングシステムであるウィンドウズで使用可能なドビー織物用の織方図作成ソフトウェアの開発を行った。開発した織方図作成ソフトの基本仕様を以下に示す。また、図1は織方図作成ソフトの画面を示す。
(1)動作環境
OS:Windows 95
メモリ:8 Mbyte以上
ハードディスク容量:50 Mbyte以上
表示:800×600ドット以上
印刷:Windows対応プリンター
(2)機能
描画機能:マウスの左ボタンで描画,右ボタンで消去する。また,マウスの代わりにキーボードによる描画,消去も設定可能である。
さらには,一点描画,ライン描画,BOX描画のツールが用意されている。
編集機能:領域指定をすることにより,領域内の描画点をコピー,切取することが可能である。また,描画点を反転(上下,左右,○×)する。ここで,○×は描画点と消去点を入替える操作を表す。
印刷機能:作成した織方図および紋栓指示書,引込指示書,色を付けたデザイン図を印刷する。
特に,製織現場で必要となる紋栓指示書と引込指示書の印刷物の様式については,中能登地域織物業で組織するドビー織物CAD研究会で検討し,その様式を決定した。また,組織図の罫線付きコピーを可能とし,他のウインドウズアプリケーションに利用できるようにした。
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| 図1 織方図ソフトウェア |
(3)解析機能
図1に示したような簡単な組織の場合,組織図から紋栓図と引込図を描くことは容易である。しかしながら,梨地組織と呼ばれる複雑な変化平組織(例えば,組織サイズが120×120)の場合は,組織図から紋栓図と引込図を描くにはかなりの時間を要する。また,紋栓と引込の数値データしか分からない場合があり,どのような組織になるか理解することができない。そこで,組織図から紋栓図・引込図の作図,紋栓図・引込図から組織図の作図等の解析機能を備えることにより,織方図の作成時間の短縮化を図っている。
2.2 新規織物の試作
新規織物の試作には,柄変更が容易にできる石川メイド生産機械の(株)石川製作所製のレピアルーム(ISL-1001-U,おさ幅150cm)とストーブリ社製の電子ジャカードシステム(CX-860,口数2688)を使用した。また,電子ジャカード用紋紙データの作成には,(株)両毛システムズ製の製織データ(CGS)作成システム(CADj/Win)を使用した。図2に試作した壁装材を金沢ステーションギャラリーに展示した写真を示す。壁装材に用いた紋様は,インドのグジャラート州アーメダバード市にある「キャリコ染織博物館」所蔵品の柄から選定した。織密度はたて74本/cm,よこ32本/cmでたて糸にポリエステル55.5dtex,よこ糸にレーヨン166.6dtexとポリエステル166.6dtexを用い,異色染めに仕上げた。
また,綜絖枠12枚使いの織物組織269点を製織し,織方図作成ソフトで作成した織方図を添付し,織物組織サンプル帳としてまとめた。織物サンプルの織り密度はたて74本/cm,よこ32本/cmである。また,たて糸にポリエステル55.5dtexの白色,よこ糸にポリエステル加工糸166.6dtexの黒色を用いて,たて糸3本を同時に上下させることにより,たて糸とよこ糸の太さをほぼ等しくし,組織を良く理解できるようにした。図3は,作成したサンプル帳である。269点は2冊に分冊されている。 また,織方図作成ソフトで確認できる組織図のデータをフロッピーディスクで添付した。
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| 図2 壁装材の試作 |
図3 織物組織サンプル帳 |
3.結果
平成7年度から本技術指導事業を行ない,ドビー織物用の織方図作成ソフトウェアの開発および新規織物の試作を行った。開発した織方図作成ソフトウェアにより,組織図から紋栓図,引込図を迅速に描くことが可能となった。また,たて糸とよこ糸の密度に合わせたデザイン図を描くことができるため,製織する前に織物の外観を把握することが可能となった。
これらの成果を,中能登地域の織物業20社で構成されているドビー織物CAD研究会を中心に普及指導した。さらには,中能登地域織物業が,開発されたソフトウェアおよび織物組織サンプル帳等を活用し,新製品を開発し,提案できる企業に育つことを期待する。