繊維部 松本義隆・新保善正
2.1 装置の構成と仕様
装置の構成は図1に、仕様は表1に示す。測定部分は、布帛の熱・水分移動特性を静止空気中で測定するため、上部開放の二重の筒状構造になっている。
2.2 測定によって得られるデータ
・布帛を透過した熱量(透熱量)
・布帛を透過した水蒸気量(透湿量)
・環境空気状態(温度,湿度,絶対湿度,エンタルピー)
・布帛内側の空気状態(温度,湿度,絶対湿度,エンタルピー,水蒸気分圧)・布帛外側 の空気状態(温度,湿度,絶対湿度,エンタルピー,水蒸気分圧)
2.3 熱・水分移動特性項目
測定データより算出する布帛の熱・水分移動に関する特性項目
・透熱抵抗(全熱,顕熱の両者に対する) ・透湿抵抗 ・透熱率
・透湿率 ・保温率 ・K値(顕熱抵抗値/透湿抵抗値)
2.4 快適性能の「暖かさ」と「蒸れ」を物性値から客観的に評価する方法
1)衣服着用時の暖かさは保温率で、蒸れはK値の大きさで評価する。即ち、衣服を着用した時の保温性には、人体が放出する顕熱と潜熱の両方の移動特性が複合的に作用する。顕熱と潜熱のどちらが保温作用に寄与する度合いが大いかで蒸れの発生強さが異なる。したがって、保温率が同程度の場合、蒸れの発生強さを判別する方法として、K値の大きさで比較する。K値が大きいものは、顕熱の透過抵抗値に対して、透湿抵抗値が小さいことを示すもので蒸れの発生が弱いと評価する。
2)保温率と水蒸気の透過量の比較で評価する。即ち、保温率が同程度であれば透湿量が大きいものは、蒸れにくいと評価する。
開発した装置の特長
1)データの計測と諸特性値の演算は、コンピュータで自動処理する。
2)サンプル寸法は、15cm×15cmで織物,ニット,合成皮革,重ね着模擬実験等、厚さ10mm程度までの物が測定できる。
3)サンプル1点の測定所要時間は、60分、120分、180分の3段階で測定できる。
4)熱移動特性は、顕熱と潜熱の両方を分離または併合して解析できる。
5)着用実験なしで衣料素材の快適機能が評価できるので、データの構築がしやすく、開発研究の展開が容易になる。
構成部分 | 仕様・性能 |
---|---|
熱・水分発生体 |
・大きさ:148×148×20mm ・模擬皮膚膜:テフロンフィルター(空隙率54% 圧力損失1101mmH2O) ・熱・水蒸気発生量:熱量205Wh/m2,水蒸気150g/m2.h (水量200cc,水温36℃,環境温湿度20℃.65%RHの条件での熱・水蒸気発生量) ・水温コントロールセンサー:Pt100Ω JIS A級 ・水温制御範囲:室温〜50℃(0.1℃単位) ・ヒータ出力:36W.24V |
温湿度センサー |
・温度センサー:Pt100Ω JIS A級 0〜100℃±0.5%/F・S ・湿度センサー:高分子薄膜静電容量型 10〜100%±2% |
天秤 |
最大秤量:2100g,読取限度10mg |
データ処理装置 |
・パソコン:NEC PC98シリーズ ・プリンター:インクジェット式カラー A4カット紙 ・CRT:14インチカラー |