1.概要 FRP(繊維強化プラスチック)は耐久性に優れ多くの分野で使用されていますが,その耐久性の良さが災いして,廃棄物となった場合の処理が困難になっています。しかし,このFRPも使用するにつれて徐々に劣化が進みます。そこで,本研究ではこの徐々に進むFRPの劣化を熱水やアルカリなどを用いて加速させ,処理する方法について調べました。 2.内容 試験には,最も多く使われているガラス繊維で強化された不飽和ポリエステル樹脂のFRPを取り上げ,熱水やアルカリ水溶液中で処理する温度,時間,アルカリ濃度および添加剤を変えてFRPの劣化状況を調べました。 3.結果 図1,2は水酸化ナトリウムと水酸化カリウム水溶液による例です。処理する温度が高いほど,また時間が長いほど劣化は進み,水酸化ナトリウムではガラス繊維も劣化し,水酸化カリウムでは樹脂が溶解してガラス繊維を回収でき,FRP廃棄物の処理方法として有効であることがわかりました。また,濃度が高くなると劣化は速く進みますが,あまり高くしても効果は変わりませんでした。そこで,このアルカリ水溶液に他の成分を加えて劣化の進み具合を調べた結果が図3です。図には他の溶液も比較してありますが,酸よりもアルカリにより劣化は進み,水酸化ナトリウム水溶液に第4アンモニウム塩(QAS1〜3)を添加した場合に最も効果がありました。 このようなFRPの処理では樹脂の原料が熱水ではフタル酸として,アルカリではフタル酸とアルカリの化合物が回収できます。この化合物はポリエステル繊維のアルカリ減量加工によって生じる物と同じであり,FRPの処理と併せてこの化合物のリサイクル方法を考えて行く必要があります。 最近,プラスチック廃棄物の処理に超臨界水を利用する試みが始まっています。本研究は超臨界水状態以前の熱水とアルカリを利用して調べましたが,今後は超臨界水を考慮した処理方法を検討する予定です。 |
![]() 図1 水酸化ナトリウム水溶液による処理 ![]() 図2 水酸化カリウム水溶液による処理 ![]() 図3 各種溶液による重量と強度の変化 |