FPGA搭載システムの開発
−使いやすくなった書換え可能なLSI−

 パソコンや液晶テレビなど、近年の電化製品には多くのLSI(大規模集積回路)が使われています。その内部には数百万から数千万個のトランジスタに相当する半導体が含まれています。これらLSIの中でも特定の用途を対象とした専用品がASIC(特定用途向け集積回路)であり、製品を特徴づけるLSIです。しかし、ASICを開発するとなると、6〜12ヶ月の開発期間と、数千万から数億円という開発費が必要になるため、試作・少量生産向きではありません。それらの用途に適しているのがFPGAです。
  FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略称であり、書換え可能なLSIを示します。書換え可能なことから開発期間、開発費ともに少なくて済み、ASICの試作や中小企業での多品種少量生産品に多用されています。FPGAは1980年代半ばから存在しましたが、当時は、回路規模や速度の面で問題があり、実用に耐えませんでした。しかし、近年では半導体プロセスの微細化など半導体技術の進歩により、現在のFPGAは、回路規模、速度ともに十分実用に耐えるものです。
  また、デジタル回路設計方法の変化もFPGAの使いやすさに拍車をかけています。以前はANDやORという論理演算素子を使用し、回路図入力で設計していました。ところが1990年台半ばからHDL(回路記述言語)による設計が主流となり、ソフトウェアを開発するようにデジタル回路を開発することが可能となりました。
  HDLとしては、文法が曖昧で記述量の少ないVerilogHDLと、文法が厳密で記述量の多いVHDLの2種類が一般的に使われています。このためVerilogHDLのシェアが上がっていますが、VHDLも厳密な記述が好まれる特定分野で多く利用されています。さらに、開発した回路が正常に動作するかを判断するためのシミュレーションもHDLで記述することができ、実機動作前の検証が容易になっています。以上のことから、従来の回路図入力と比較して、HDL入力では大規模な回路を迅速に設計できるようになりました。
  このような背景を受け、工業試験場ではFPGA作製システムを電子モノづくり支援の開放試験設備として導入しています。このシステムは、FPGA搭載の評価ボードと、設計ツールISE-Foundation、検証ツールModelSimで構成されています。そして、同じく開放試験設備であるプリント基板設計CAD/CAEシステムやマイクロパターニングシステムを利用することで、FPGAを搭載したオリジナルなシステム開発が可能となります。図1は、当場で開発した様々な映像パターンを出力するシステムの例です。現在、特別研究「FPGAを用いた高速信号処理システムの開発」において、40万ゲートのFPGAを搭載した信号処理制御システムを開発中です。この研究では、従来ソフトウェアで行っていた処理を、FPGAに置き換えることで、処理の高速化とシステムの小型化を目指した開発を行っています。
  また、FPGA導入の技術支援を目的として、HDLによる設計に関する産業大学講座も開校しています。
  今後も、FPGA搭載システムの開発や、HDL設計技術指導などにより、石川県内電子業界のモノづくり支援を積極的に進めていきます。


図1.FPGA搭載映像パターン出力システム


 
担 当 電子情報部 田村陽一(たむらよういち)
専 門 工業デザイン、三次元CG、迅速試作加工技術
一 言 使ってみましょうFPGA。



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