2.1.2 太陽電池モジュール
太陽電池モジュールは,シャープ株式会社製単結晶シリコン及び多結晶シリコンモジュールの2種類を使用した。太陽電池それぞれの仕様等を表2にまとめる。
品 名:シャープ製太陽電池(多結晶,単結晶) 寸 法:1,200×802mm/枚 占有面積:1,663.03m2、屋根占有面積率 50.4% 重 量:12.5kg/枚、総重量37.1t(電池:21.6t,架台:15.5t) 枚 数:1,728枚、多結晶モジュール 1,608枚(大屋根) 単結晶モジュール 120枚(越屋根) 出 力:多結晶モジュール 120W/枚 単結晶モジュール 136W/枚 総出力:209.28kWh、多結晶 192.96kW(融雪:60.48kW) 単結晶 16.32kW 斜 度:16.7度 |
大屋根には多結晶シリコンを1608枚,越屋根には単結晶シリコンを120枚設置した。 融雪機能に関する研究を実施するため,22個のモジュールに温度センサーを取り付け表面温度の測定を可能にした。冬季においては,これらの温度センサーにより融雪の自動運転を検討する。
また,融雪エリアについては,南面は屋根上部及び東西両端部で融雪を可能にした。一方,北面に関しては東西両端部は南面と同じであるが,軒先部(屋根下部)が融雪対応になっており,南北面で融雪位置を変化させた。
2.1.3 インバータ
定格出力200kWのインバータには,古河電気工業株式会社製30kW容量6台,10kW容量2台の計8台を用いた。この内,30kWインバータ全てには,融雪時逆電流を流すため,双方向型を採用した。通常よりインバータ台数が増加したが,これにより融雪位置を自在に変化させることが可能となっている。また系統連系保護装置は「系統連系技術用件ガイドライン」(通産省)に沿って,各々のインバータに取り付けてあり,系統連系に十分配慮した。
2.1.4 データ計測システム
装備した主な計測装置を表3にまとめた。写真2は実験棟屋根に設置した一部のセンサーであり、表示装置や本試験場での展示風景を写真3に示す。
写真2 実験棟設置センサー類
写真3 エントランスホールでの展示風景(石川県工業試験場正面玄関内)
種 類 | 台数 | 備 考 |
パソコン | 3 | 各インバータ出・入力電力等発電関連データ計測用 1台 モジュール温度、気圧、風向等気象関連データ計測用 1台 NECO関連データ計測用 1台 |
日射計 | 3 | 水平面、南面、北面各1台 |
表示装置 | 1 | 日射強度、発電量、積算発電量を表示 |
気温計 | 1 | 測温抵抗体(Pt100Ω) |
気圧センサー | 1 | 簡易シェルター付き測定圧力範囲:800〜1060hPa |
湿度計 | 1 | 測定湿度範囲:10〜100%RH |
風向・風速計 | 1 | 耐風強度80m/s |
降雪センサー | 1 | 光電検出方式水分/外気温による自動運転 |
モジュール温度計 | 22 | 熱電対、太陽電池モジュール内に取付 |
NEDOとのフィールドテストに関して,総発電量,日射強度等毎日計測したデータはデータ通信機能により自動的に夜間伝送される。その他,融雪機能の研究を行うためには,気圧,湿度等の気象データや,各インバータの発電量等の発電データを検討する必要性があり,工業試験場独自に計測システムを設けている。
またNEDOデータは6秒毎に,工業試験場データは原則的に10秒毎に計測される。全てのデータ蓄積用パソコンは場内のLANケーブルに接続されているため,インターネットにデータを掲載することも可能となっている。
3.システム設置の成果
3.1 NEDOとの平成9年度共同研究成果
「石川県工業試験場の実験棟屋根面」を利用して,日本で最大級の大型出力200kWの太陽光発電システムを設置した。単結晶モジュール16.32kW,多結晶モジュール192.96kWを南・北面に均等に設置し,さらに越屋根にも設置するなど屋根面への荷重付加が均等となるよう耐震性に配慮するなど工業試験場に適した太陽光発電システムを構築した。
本システムは「石川県地域新エネルギービジョン」に基づき,積極的に太陽光発電システムを導入すべきであるという認識に立ち,地域社会の先導的モデルとして大きな役割を担っている。また県内,北陸地域のみならず積雪地域の公設機関などから注目されており今後の新エネルギーの普及促進,環境保全に向け大きく貢献している。
工業試験場は公設試験・研究機関の中枢として,同施設を核として石川県の産業振興ゾーンが形成されているため,県内産業界はもとより国内外からも来場者が非常に多く,地球環境分野等をテーマとした研究開発を実践する上で大きく貢献している。
なお,NEDOとの共同研究は,平成13年度迄の5年間継続される。
3.2 期待される技術的効果
石川県は日本海側のほぼ中央に位置し,太陽光発電システム導入には不利と考えられている積雪地域に該当している。そこで、冬季間の融雪を目的として太陽電池に逆電流を流すことが可能なシステム(電池容量60.48kW)を導入している。このシステムは本事業で初めてフィールドテストされるが,この技術が確立されると積雪地域への普及促進に大きく寄与し,今後の積雪地域等への導入計画に対して有意義に活用できる。
また,200kW太陽光発電システムの適用性や安定性,有効性等を実証するとともに,諸データの収集を行い,県民に広く蓄積データの提供ができるだけでなく,検討・解析することにより県内への普及・啓発,企業指導,企業育成に役立てることが可能である。
太陽電池モジュールの屋根への設置に関しては,築14年経過した既存屋根への設置を十分に考慮した上に,屋根との一体的デザイン化を図り,違和感を与えないように工夫した。その上、よりシンプルに設置することにより,架台の軽減・工事の低減が図れ,コストダウン等を可能にしている。既存屋根への太陽光発電システム導入事例の一つとして,今後の導入計画に対し広く技術情報の提供ができる。
3.3 啓発効果
工業試験場には年間数千人の来場者があり,さらにインターネットで解析データ等の情報を発信することにより,啓蒙普及が促進できる。また各種の展示会等へ積極的に参加し太陽光発電の啓発に取り組んでいる。
4.結 言
平成9年度は200kW太陽光発電システムを石川県工業試験場実験棟屋根に設置した。設置方法については太陽電池モジュールを南北両面に均等配置したことや,築14年経過した従来屋根を活かす工夫をしたことなど独自色を明確に示した。また日本初融雪機能を付与したシステムを採用し,積雪地域での太陽光発電の普及促進を考慮した。今後の課題は,共同研究を通して各システムの適用性や安定性を実証するとともに,各種データの収集・解析を行い融雪機能の向上を目指し太陽光発電システムの高効率化を推進する。さらに,産学官の連携を強化して太陽光発電関連分野の技術開発を図り,新規産業の創設を目指すことにしている。
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