3.研究開発の推移
3.1 基礎実験−添加比率の検討
研究開発当初は,生コンスラッジを1とした時の鋳造廃砂の添加比率1.0〜2.0の範囲で円柱試料(長さ20mm,直径13.2mm)を成型し,1100℃×1hの加熱条件により電気炉で焼成した。その結果,添加比率1.6で破壊荷重が524N/Pで極大となったので,最適配合比率と判断した6)。しかしながら,1)最適な焼成温度域が狭く,2)実際の操業炉においては20〜30℃の温度分布が存在することや,3)CaOの比率が高いために焼成後の骨材の安定性に課題を残す等の問題点に対処するために新たな原料として浄水場の発生汚泥を添加することにした10)。
基本配合比として,生コンスラッジ1:鋳造廃砂1.8として,浄水場の発生汚泥の添加比率を外割で0〜20%を5%毎に5段階で配合した。その後,真空土練機で円柱試料(長さ50mm×直径25mm)を成型,乾燥後,電気炉で図3の焼成パターンにより,1時間焼成して適正比率と最適焼成温度を求めた。更に最適焼成時間を求める実験では,浄水場発生汚泥を5%添加した試料について,焼成時間を5,30,60,180分と変化させた実験を行った。
図3 骨材の焼成曲線
3.2 中間実験−人工軽量骨材の試作
生コンスラッジ,鋳造廃砂及び浄水場発生汚泥の乾燥重量比率を1:1.8:0.4になるように計算し,全体の水分が35%になるように加水してから混合撹拌後,真空土練機で更に混練して厚み25mmの板状に加工した。乾燥後,最大径が約20mm,最小径5mmになるように破砕造粒した。この破砕物を高砂工業(株)(岐阜県土岐市)のローラハースキルンで,1135℃で1時間焼成し,人工軽量骨材を約1ton試作した。
3.3 中間実験−人工軽量骨材の評価
試作した骨材の絶乾比重及び実積率は,表4に示すように絶乾比重が1.44で,実積率が62.8%になったので種類MAに区分される。
項 目 | 実測値 | 区分 | 摘要(JIS A 5002) |
絶乾比重 | 1.44 | M | 1.0以上1.5未満 |
実積率 | 62.8% | A | 60.0%以上 |
JIS A 5002に基づく骨材の品質試験結果を表5に示す。測定試験項目のすべてがJIS規格に合格していることを確認した。
試験項目 | 試験結果 | 規 格 |
強熱減量 | 0.0% | 1%以下 |
三酸化硫黄 | 0.2% | 0.5%以下 |
塩 化 物 | 0.00% | 0.01%以下 |
有機不純物 | 無色 | 標準色より濃くないこと |
粘 土 塊 | 0.0% | 1%以下 |
浮 遊 率 | 0.0% | 10%以下(JIS A 5308) |
骨材中のシリカがアルカリと反応して基準量を超える溶出がある場合,コンクリートを膨張させてひび割れが生じる。表6より溶解シリカ量がアルカリ濃度減少量より少ないので,試作した人工軽量骨材は,無害であることを確認した。
試験項目 | 実測値 | 摘要(JIS A 5308) |
アルカリ濃度減少量(Rc) | 41.4mmol/l | Sc 10mmol/l以上 Rc70 |
溶解シリカ量(Sc) | 9.1 | 0mmol/l未満,Sc>Rc有害 |
3.4 中間実験−軽量コンクリートとしての評価
試作した人工軽量骨材を粗骨材としてJIS A 5002及び5308に従い,細骨材には川砂を用いて普通ポルトランドセメントでコンクリートの試し練り実験を行った。この試験に供した材料の物性を表7に示す。一方,示方配合は表8に示すように2種類の設計でコンクリート供試体を作製した。
設計方法 | 種 別 | 比重 | 粗粒率 | 吸水率 |
セメント | 普通ポルトランドセメント | 3.16 | − | − |
細骨材 | 川砂 | 2.58 | 2.66 | − |
粗骨材 | 試作した軽量骨材 | 1.44 | 6.46 | 2.44% |
水 | 地下水 | 1.00 | − | − |
混和材 | AE減水剤 標準型 I 種(JIS A 6204) | 1.29 | − | − |
設計方法 | JIS A 5002 | 軽量1種21-18-15N |
水 | 170 | 185 |
セメント | 425 | 331 |
細骨材 | 717 | 841 |
粗骨材 | 602 | 456 |
混和材 | 使用せず | 0.662 |
フレッシュコンクリートの性状は,市販非造粒型人工軽量骨材と同じであり,JIS A 5308に従って呼び強度21による試し練り試験においても同様な結果が得られた。これらの結果を表9にまとめて示す。
試 料 | スランプ (cm) | 空気量 (%) | 単位容積質量 (Kg/l) | 圧縮強度 (N/mm2) |
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A | 実測値 | 8.0 | − | 1.91 | 45.1 |
区 分 | − | − | 19 | 40 | |
規 格 | 8.0±1.0 | − | 1.8 〜 2.0 | 40以上 | |
B | 実測値 | 19.0 | 5.5 | 1.87 | 27.5 |
規 格 | 18±2.5 | 5.0±1.5 | − | 26.1 |
表9に示すAはJIS A 5002,Bは軽量1種21-18-15Nである。Aにおける圧縮強度は45.1N/mm2に達しており,十分構造用軽量骨材として使用できることを確認した。
写真1に示すコンクリート供試体の破断面写真から,完全な粒内破壊が観察され,骨材とモルタルとの親和性が良好で圧縮強度の向上に寄与していると言える。
写真1 軽量コンクリートの破断面
3.5 実証実験による人工軽量骨材の製造
これまでの基礎実験の結果を基に,以下に示す目的で実証規模の人工軽量骨材の製造プラント(能力2〜5ton /日)を同工場内に建設した。(平成9年度 創造技術研究開発事業/中部通商産業局)
3.5.1 開発目的
1) 中性に近い雰囲気を保つことができる炉の開発
2) 製造コストの試算
3) 軽量骨材の大量試作とその評価
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