漆器椀の変色防止技術の実用化
製品科学部
情報指導部
市川太刀雄・江頭 俊郎
坂本誠
漆器製品の椀、盆、座卓等は、温熱水に触れると塗膜表面が黒色から褐色に変色し、クレームの原因となっているが未だ解決されていない。このため、本研究では、適正な製漆方法(なやし:攪拌、油脂添加量)やカーボンブラック、ウルシオール添加等に改良を加え、変色の少ない黒漆の製漆技術の確立を目的として実験を行った。
その結果、次のことが明らかになった。
(1)鉄着色剤の添加量は、0.3〜0.4wt%が塗膜の変色が少なく、刷毛塗りも容易であった。
(2)なやし(攪拌)時間の違いで、塗膜の光沢や変色に影響することが分かった。
(3)つや剤の添加量は、生漆100部につや剤10〜15部が塗膜の変色防止に効果があった。
(4)カーボンブラックの添加量は、3〜4wt%が塗膜の変色が少なく、刷毛塗りも容易であった。
(5)ウルシオールを30wt%添加すると塗膜の変色が少なくなった。
(6)椀による実用試験でも、上記の効果が確認できた。
キーワード
:漆、変色、熱水、カーボンブラック、油脂
緒 言
実 験
2.1 実験手順
2.2 供試材
2.3 製漆
2.4 漆液の組成及び物性の測定方法
2.5 漆膜作製方法
2.6 変色促進試験方法
2.7 漆膜の物性測定方法及び表面観察
結 果
3.1 漆塗膜の鉄含有量の違いと熱水による変色について
3.2 なやし(攪拌)時間の違いと促進熱水試験による変色について
3.3 つや剤の添加量と促進熱水試験による変色について
3.4 カーボンブラックの添加量と変色防止効果
3.5 改質漆(ウルシオール添加、分散乳化処理)の変色防止効果
3.6 椀の繰り返し熱水試験及び実用試験
結 言
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